マグマ団

1.プロローグ・マグマ団

「ちっ・・」
どさっ と言う音が響き渡る。そこには
頭から血を流している男性が倒れて居た。
それを見ているもう一人の男性。

「死んだか・・?」

意識が無い為、そう思い込んでしまったようだ。
そいつはマグマ団の服を着ていた。幹部らしい。
「仕方ない。こいつを始末しろ」
「はっ」
したっぱに処理を命令し、幹部は腕組をした。
「一人足りないな・・。部員が・・」

そう言うと、幹部は他のしたっぱにもう一つ命令を出した。
「おい。誰でもいいから強い奴をつれて来い」

「と言いますと・・」

「一人部員が足りないんだ。どんな汚い手を使ってもいい。
とっとと一人連れさらって来い」

「分かりました」
そういうとしたっぱは、他の部員に連絡し、大体
5、6人を連れ町へと向かって行った。

そして大きな青い空へと消えていった。その方角は
カイナシティ。たくさんの人々が集まる場所。

そんな平凡な町に、ある一行がたどり着いていた。

 

2.コンテスト・ミナモ大会

「わ〜。とっても広い町!ねぇタケシ!ここにはいつまで
いるの?」

「そうだな。色々買い物もしたいし、大体1週間くらい
いるか」

「それならゆっくり買い物できるかも!!」
目を輝かせ、うきうき気分で居るのは、ハルカである。

「おねぇちゃん。この町ってコンテストあるんだよ」
「え!?あ、あるの?!そんなの聞いてないかも・・」
「まぁいいじゃないか。いい練習だ。この町は規模が広いから
結構手ごわい奴がそろってるぞ」

「あ〜余計プレッシャーかかるわ・・」
先程の様子とは裏腹に、だんだんテンションが下がるハルカ。
そこに・・・

 
「おぉ!!あったぜハルカ!あれきっとコンテスト会場だ!」
「ピッカ!」
気分ノリノリのこちらはサトシ。そして相棒のピカチュウ。

「い、いきなり・・」
「がんばれおねぇちゃ〜ん」
「優勝期待してるぞ〜」
「え〜ん」
そしてエントリーの後、ハルカはコンテストが始まるまで
今度出そうと思っているワカシャモの調整をしていた。

「よし!結構ポイント高いかしら?」
「シャモ!」
「あ、もう始まるわ。控え室行こうワカシャモ!」
「アッシャ〜!」

会場に着くと、3人がそろって待っていた。
「な、何か不気味かも・・」

「な、不気味って失礼な奴だな。優勝してもらわねえとな」
「そ〜そ〜。こんな大きな大会で優勝したら、僕弟として
鼻高いやぁ」

「ははは」

「う〜・・」

そして・・

 

3.ロケット団とマグマ団

コンテストの後、ハルカの手にはミナモリボンがあった。
「嬉しいかも!ミナモリボン、ゲットカモ〜!」
「シャァモ!」

「おめでと〜おねぇちゃん!!」
「いいバトルだったぜ」
「ちょっと危なかったけどな」
口々に言う三人に対し

「まぁ優勝したんだからいいじゃないのv」

ハルカはリボンを手に持ち、町へと出かけた。
その様子を見る黒い影。

「ニャニャ。ジャリガールの奴。優勝してるニャ」
「キーー!私だって出たかった出たかった出たかった!!」
「落ち着けムサシ!今度出れば・・」
おなじみロケット団。

「こうなったら!あのリボンを奪ってやるわ!」
「またかにゃ〜」
「もうあきれたぞ、その作戦・・」
「ごちゃごちゃ言わん!」

「「は〜い・・」」

「ってことで、早速これなんだけど」
「な、なんにゃ?これ」
「名づけて『なんでも奪おうマシーン』!」
そこにあったのは、何とも奇妙な形をしたマシーン。

「なんかセンスの無いマシーンだなぁ・・」
「うるさいコジロウ!!」
「・・・はぁ」
「この機能知らないの?!馬鹿ね!予算で作ったのに!」
「おい!いつの間に!」
「これはね、ピカチュウだってジャリボーイのポケモン
すべてだって、リボンだって何でも捉えれる優れものよ!
分かる?!」

「はぁ・・」
「って訳で。早速開始よ!」
「イエッサ〜・・」

 

4.失踪

『ラプラス。シロイキリ』

 
ムサシがスイッチを押したと同時に、白い煙が立ち昇った。
しかし、これはロケット団が仕掛けた物ではなかったのである。
マグマ団部員の仕業だ。

「な、なんだよこれ!!」
「ゴホゴホ・・!僕こういうのムリだ・・」
「落ち着け二人とも!」
「なによこれ〜」

そして上空では・・

『ミナモコンテストユウショウシャハッケン』
『カクホシマス』
空から何かがハルカ目掛けて飛んできた。

「きゃぁ!!」

「ハルカ?!」
「おねぇちゃん!」
そしてロケット団も。

「何が起こったんだよ〜!」
「知らないわよ!ニャース!何とかしなさい!」
「そんにゃことニャーは知らないニャ!ゴホゴホ!」

煙がやっと少なくなった頃、ハルカは姿を消していた。

「お、おねぇちゃん!!」
「一体どこへ・・」
「ピッカ!」

「ありゃ!肝心のジャリガールが消えたわよ!」
「しらないのにゃ!そんにゃこと!」
「手品か?」
相変わらずいつもの平凡さを保っているロケット団。
しかし三人はただ事ではすまないと思っていた。

「ハルカー!」
サトシが叫んでも、ハルカは返事をしなかった。

 

5.催眠術

(ここどこよ〜・・)
ハルカはよく分からないところで目を覚ました。
「はぁ・・訳分かんない・・もう出たいよぉ・・」
(あれ?)
立ち上がろうにも立ち上がれない。重りがついているのだ。
「うっそ・・どうしよう・・誰か助けて〜;;」
あれこれ考えているうちに、足音が聞こえてきた。
(だ、誰?)

 
「やっと起きたか小娘」
「・・・?!」
「ふ・・君は今日からマグマ団だ」 (え?!) ハルカは今までの事を思い出そうに思い出せないのである。

「君の記憶はすべて消しておいた・・。人物も・・ポケモンも
出来事もな」

(うそ・・)

「わ、私・・。サトシ・・だけ・・」
不思議な事に、サトシと言う名前だけ頭にしっかり
残っていた。

「ほう。覚えているとはな。でも君に催眠術をかける・・。
そうすれば君はもう何もかも忘れ、マグマ団と言う認識を
持つさ」

ハルカは何故かびくびくしない。記憶を消していたから
なのだろうか。

 

「フーディン・・催眠術だ」
「フゥ〜!!」

途端にハルカの意識が途切れた。

 

6.マグマ団幹部

倒れたハルカを、ゆさゆさ揺す振る幹部。

「起きろ小娘」
「ん・・・」
「これを着るんだ」
「・・・・」
「着ろ」

「分かりました」
ハルカから出た言葉に、幹部はにやりと笑った。
ハルカは従うままに、団服に着替えた。

「お前の名前・・聞いてなかった」
「ハルカです・・」
「ハルカか・・お前も幹部でいい」
「有難うございます」
「私はリイズ。マグマ団の幹部だ」
「はい・・」

「それで、早速お前に命令だ」 「・・・?」

 
一方・・

「ハルカ〜!!」
「お姉ちゃん〜」
「どこに居るんだ〜」
「ピッカァ〜」
何時間探しても居ないハルカに、三人は深いため息をつく。

「今日は野宿だ。ここでテントを張ろう」
「僕やだ!!」
マサトの一声でしんとなった。

「おねぇちゃん探すもん!!」
そう言うと一人で駆け出して行った。

 
「マサト・・」

 

7.貴方と戦う

「こいつらを殺すのさ・・」
リイズはハルカに、3人の写真を見した。
サトシ・マサト・タケシであった。ハルカは何かを感じ取った
様な顔をしたが、すぐに元に戻る。

「こいつらには仇をうってない・・ポケモンを使って
殺すのだ。いいな」
「・・はい」

ハルカは言われるがままに、三人が居るところへハルカは案内された。

 

ハルカがたどり着いたのは、まさしく三人が居る5mくらい
前の木陰・・。3人は焚き火を焚き、無言で向き合っていた。
ハルカの頭に、あの言葉がよぎる。

 
「あの三人を殺せ」

今あそこに居る三人を殺すなんて、催眠術をかけられたハルカ
でも出来なかった。しかし、ハルカは命令に従った。

 
「ハルカ!」
「おねぇちゃん!」
「心配したんだぞ?!」
「ピカピカvv」
三人がハルカに気づき、駆け寄ろうとしたとき、ハルカは

「動かないで!」

ハルカの発した言葉に、サトシたちは呆然とした。
「ど、どうしたんだよハルカ・・」
サトシが歩み寄っても、ハルカはサトシを睨み付ける。

「なんでマグマ団の・・」
「動かないでって言ってるでしょ!!」

 

8.僕は君と戦わない

ハルカは、ワカシャモを出した。

「シャモー!!」 ワカシャモも催眠術にかかっているらしい。

「ワカシャモ!火炎放射!」
「シャァモーー!!」
格段に炎の熱が上がっているワカシャモの火炎放射を
ピカチュウが浴びた。

「ピカァー!!」
「ピカチュウ!」
その場で倒れこんだピカチュウに、ハルカはワカシャモを利用し
指示を出した。

「ワカシャモ。スカイアッパーでとどめをさして!」
「シャーー!」
ピカチュウに命令したスカイアッパーは、サトシの心を
深く傷付けた。

「サトシ!ハルカは操られているんだ!戦え!」
タケシの言葉を、サトシは聴かない振りをした。

「ハルカ!聞いてくれ!」
「?!」
「俺はお前とこんな風にして戦いたくないんだ!こんなお前と
戦いたくないよ!」
「・・・・」

 

9.思い・感情・意思

「俺・・確かにハルカと戦って見たかった。けどこんな形で
戦ったって全然意味ないと思うんだ・・」

サトシはその場で泣き崩れた。その背中をピカチュウが
ポンと叩く。
「ピィカチュ・・」
サトシはピカチュウの方を向いて、ふっと笑った後に
すぐ視線をハルカに向けた。

「もうやめようぜハルカ」
真面目な顔つきで、サトシはハルカに歩み寄った。
ハルカは少し驚いたのか、顔が引きつったと思うと一歩
後ずさりをした。
サトシはそんな事お構い無しに、どんどん歩いてくる。
その度にハルカは後ろへと下がって行く。そして、

「ワ、ワカシャモ。ひっかく!」

ハルカがワカシャモに指示を出した。サトシははっとした。
「シャモ!」
ワカシャモの攻撃は、またサトシに当たった。

「うわぁぁぁ!!」

サトシは腕から血を流した。ピカチュウとタケシマサトは
その様子を見てサトシに歩み寄った。

「大丈夫か?!」
「ひどいよおねぇちゃん!!」
「待てタケシマサト・・」

サトシはよろけながらも二人をのけてハルカの方へ行った。
「何度でも攻撃してみろよ・・お前が元に戻るまで・・
俺はこのままで居てやるぜ・・」

ハルカは手で口を押さえてその場に座り込んだ。
その時だった

 

10.無意識

「うわ!?ちょちょタケシなにさあれ!!」
「あ?なんだ?」
タケシ・マサトが見た物は、赤いマグマ団の艦。
ハルカはそれを見てワカシャモをモンスターボールに戻した。
その艦から聞こえてくる声。

『ふ、悪戦苦闘しているか・・まだ初心者って所だろうしな・・』
その声の主はリイズであった。リイズはサトシの腕から流れている
鮮血を見て、

『なかなかやるな・・。でもここは少し手助けが必要か・・』
そう言うと艦から電撃が発射された。

『お前の手助けと思え・・そのネズミに攻撃する・・』
電撃がピカチュウ目掛けて来た。かなり電力が強そうである。
「ピカァ!」
「ピカチュウ!!」
もう避けられまい、と思った瞬間、ハルカが無意識にピカチュウの
方へ飛び出した。
『な・・!?』
「ハルカ!!」

ドッカーン!!

黒い煙が立ち昇り、三人は咳き込んだ。サトシははっと
「探さなきゃ・・。ハルカとピカチュウを・・」
しかし、立ち上がろうにも立ち上がれない。その時

「いたた・・」
「ピッカ〜」

ハルカとピカチュウの声がした。
「ピカチュウ!ハルカ!」
まもなく煙が大分おさまり、よくあたりが見えるようになって
来た。ハルカはピカチュウを抱いて、倒れていた。

「あ〜・・痛いかも・・」
「チャァ〜!」

ハルカはもう術が解けた、サトシはそう思い込みハルカに
駆け寄ったが、ハルカはまたサトシを避けるようにして
立ち上がった。

「ハルカ・・?」
サトシと視線が一瞬合って、ハルカは無言でピカチュウをサトシ
に渡した。

『おのれ貴様・・裏切りあがって・・これは罰として思いしれ!』
リイズは顔を赤くして、モンスターボールからブーバーを
出した。

「ブーバー!オーバーヒートだ!!」
「ブゥゥゥ・・!!」

 

11.仇と恩返し

「危ないおねぇちゃん!」
「避けるんだハルカ!」
必死に叫ぶタケシとマサトの声なんか、今の状態の
ハルカになんか聞こえるようなものではなかった。
「・・・・!?」
声を出すに出せないような状態のハルカを
サトシが

「避けろって・・いってるだろ!」
ドン、とハルカを横に突き飛ばした。
サトシもその衝撃で、頭から地面に転んだ。

「ピカァ!!」

何とかブーバーの攻撃は避けられた。しかしそれは
第一回目の攻撃とも言う。つまり攻撃の幕開けであった。

「くそ!ここは俺がやる!マサトも引け」
「ちょっとタケシ!」
「仕方ないだろう!」

ガシャン!!

「うわぁ!」
戦う体制に入ったタケシの周りに柵が降りてきた。

「・・・だめだ・・!」
マサトもその中に入っているために、何の手助けも
出来なかった。

『お前らは邪魔者だ。私達の取り込みの邪魔をするんで無い』

タケシたちはその場で歯を食いしばっていた。
ハルカはそこで倒れこんで、気を失っている様子である。
そこで何とか出来るのはサトシとピカチュウだけであった。

「サトシ!もうどうにもならないぞ!」
「どうするつもりなの?!」
何度も言葉を漏らすタケシたちに、サトシは言った。

「どうって・・やるしかないだろ・・」
そう言うと重そうな体を引きずり、立ち上がった。

「お前リイズとか言ってたな・・。勝負しろ・・!」
『…ほぅ、面白いじゃないか・・』

「ハルカの今までの仇と、ピカチュウを守ってくれたハルカ恩返しだ・・まとめて返してやるぜ・・」



12.好き・すき・スキ

「行くぞピカチュウ!本気でやってくれ!」
「ピィカチュウ!!」

サトシはリイズを睨みつけながら、指で指した。
「人の心を勝手に操った罪って重いもんだぜ!
ピカチュウ!10万ボルト!」

『何を格好付けて言っておるのだか・・何事も成功すれば
いいのだ!人の心なんてどうでもいい・・!』

ピカチュウの10万ボルトはリイズのブーバーに向かって
発射された。

『ブーバー!火炎放射だ!』
「ブゥ〜バァーー!!」
ふたつの攻撃がぶつかり合って、そこで大きな爆発が起こった。


ハルカはその音で目が覚めたようだった。

「(ごめんねサトシ・・なにも出来なくて・・)」

そこで意識がまた途切れた。





何時間経ったか分からない・・・。
なにやら周りが騒がしい・・・。

「おい、何でこんなトコに人が居るんだよ・・」
「死体・・じゃないよな・・」
「気を失ってるだけだろ、バーカ」

ザワザワと人の声を聞きながら、ハルカはしばらくそこで
目を瞑っていた。そこに・・


「どいてください!警察です!」

サイレンの音が、そこに響き渡り、ハルカの耳に何度も
エコーする。
フッと小さく横を見たら、そこにはサトシとピカチュウが
倒れていた。


「この子達をセンターに連れて行きます・・」
「分かりました」
ハルカはタンカに乗せられ、その横のサトシとピカチュウも
一緒に乗せられた。

そして・・



13.お礼

「ゃん・・お姉ちゃん!!」
マサトの叫ぶ声で、ハルカは目が覚めた。
そこにはマサトが涙目でハルカを見ていた。

「マサト・・」
「・・・・っもう!馬鹿馬鹿!お姉ちゃんの馬鹿!」
泣きじゃくっているマサトを、ハルカは黙って見つめていた。
そこに、タケシと看護婦さんが入って来た。

「ハルカ!大丈夫か?」
「気分はどうですかハルカさん」

心配そうに聞く二人に、ハルカは何も答えなかった。
答える気にはならなかった。
ハルカは今までの記憶をたどって、サトシの事を思い出した。
そして体が操られているかのように、ハルカはベットから
飛び出した。しかし

「っ・・・!」

足に激痛が走る。足元を見ると、包帯が巻かれてあった。

「おいハルカ!無理するな!・・・サトシなら別の病室に
いる」
ハルカはタケシの方を見た。でもすぐに顔を伏せた。

「お姉ちゃん。サトシは全然大丈夫だって。お姉ちゃんが起きる
前まで、ずっと此処に居たんだよ」

その言葉を聴き、ハルカの目から涙が溢れた。
「今はつかれて眠ってるから、安心してください」
看護婦さんが笑って言った。


「ねーータケシ」
「なんだ?」
「さっきのリイズとか言ってた奴さ、どうなったの?」
「あぁ。あいつならさっきジュンサーさんに捕まってた」
「あれってマグマ団だよね」
「そうだろうな」

その後、タケシとマサトはポケモンセンターにいったん戻り、
一夜が明けた。



14.お見舞い

「いたたたたた・・・」
「そんなに無理しないでも・・」
「サトシにお礼言わないといけないんで」
「そう。ならいいんだけれど・・」
看護婦さんはふっと笑った。

そのころサトシは

「あ〜〜〜〜・・・。腹減った」
ベットに横になりながら、何やら本を読んでいた。
先程朝ごはんが終わったところだが、サトシにはどうも
ボリュームがない朝食だったらしい。その為サトシの腹の
虫が、ずっと鳴いていた。

「何か・・・何でもいいから食いたい・・飢え死にするぜ」

コンコン
ノックの音が聞こえた。

「?なんだ・・・もしや食いモンの配達?!お〜やったぜ!
どーぞ入ってください!」
ノブが開き、そこに立っていたのはハルカと看護婦さんだった。

「やっほーサトシ♪」
「ハルカ!」
サトシの顔が明るくなった。食いモンよりも嬉しいプレゼントで
あった。

「もう大丈夫なのか?」
「うん♪サトシにお礼言いたくて」
にっこり笑うハルカに、サトシは思わず動揺して顔を赤くした。

バタン

看護婦さんが部屋から出て行った。
「(お邪魔しちゃ悪いものね)」


「ごめんねサトシ」
「な、何だよ改まって」
「私のせいでなんか色々メイワクかけちゃったよね」
「ん?気にしてないぜ。あ、そうだコレ」
サトシはバックからハルカの服と何やら小さな箱を渡した。

「あ、服か・・。どうしたのコレ?」
「ジュンサーさんに預けられた。コレ渡しといて〜ってさ」
「そっか」
もう一個の小さな箱に、ハルカは目を付けた。

「サトシ。コレ何?」
「お見舞い」
「おみまい?」
「そ」
包装紙に包んである小さな箱を開けたら、中にはピンクの
綺麗なネックレスが入っていた。

「綺麗・・。もらっていいの?」
「当然だろ。これ、お前に何か似合いそうだったから」
ちょっと得意げに笑うサトシに、ハルカは「ねぇ」と
声をかけた。

「なんで・・・」
「へ?」
「何でここまでしてくれるの?」
「???」
「ここまでメイワクかけて・・。なんでこんな事してくれるの
かなぁって・・」
苦笑いしながら、ちょっと溢れた涙を手で拭い、サトシに言う。

「・・・・・」
サトシはちょっとびっくりしたのか、しばらく黙り込んでいた。

「それは、お前が特別な人だから」

普通に言ったけど、サトシは相当恥ずかしかったみたいで、
ちょっと赤面してそっぽを向いた。

一方のハルカは、ずっとにこにこしていたけど。

「こ、これ。なんかさ、えと、好きな人にプレゼントすると
両思いになれるって言うから・・」

「・・・・っぷ!」
「そ、そこで笑うな!こっちだってすっげー恥ずかしいんだぞ!」
「なんかサトシらしくないな〜って・・」
「・・・ちぇ・・本気なのにさ」


別に本気じゃなくても、本気でも嬉しかったからいいや。

でも、実は本気の方が嬉しかったりしてね。


 

マグマ団に洗脳されたハルカが、サトシたちと戦わなければならないっていうちょっと哀しいようなお話です。
サトシも、そしてハルカ自身も辛かったのでしょう。
仲間のために、自分の意思で元に戻り、そして最後は無事に決着をつける。
お互いの想いも通じ合えて良かったです。

Commentator by 冬草


戻る