幻の島と神の宿る宝

1.プロローグ

かつて、世界に3つの宝があった。

それぞれの宝に神が宿っているといわれ、その宝は、持ち主を選ぶと言われていた。

その宝を持ち、集まった宝に触れし者の望み叶えん。

その昔、力を求めた悪しき者が一つの宝を手にした。

その力により、世界は絶望に包まれた。

人々に出来ることは、宝に認められた勇気ある救世主が来る事を祈りました。

そして、祈りが通じたのか、悪しき心を切ることの出来る剣を持つ若者が、勇気の証である宝に認められ、悪しき者と戦い、悪しき心を、地の底に封印しました。

世界に平和が戻ったと思われたその時、悪しき者の心が、封印から逃れ、蘇りました。

悪しき心は、人の体に乗り移り、またもや世界を絶望に陥れました。

しかし、救世主は現れず、人々は、最後の手段として、都市そのものを悪しき者の心ごと封印しました。

その後、どうなったか知る者はいなかった。

 
ハ「うう、泣ける映画だったかも」
サ「まぁ、なぁ」
ハ「サトシは何で泣いてないの?」
サ「昔っから俺、映画で泣いたことないからな〜」
ハ「あんなに泣けたのに?グス」
サ「さっきから泣きすぎじゃねえか?」
ハ「そんな事、あるかな」
それでも涙が止まらないハルカを、サトシは抱きしめ、言った。
サ「そんなに泣きたいなら、俺の胸の中で泣いたら良いさ」
ハ「ふぇ〜ん、可哀想だったよ〜」
ホウエンリーグから約5年、サトシは念願の「ポケモンマスター」の称号を、ハルカは「トップコーディネーター」の称号を得ていた。
ハルカの告白をOKしたサトシは、トウカシティで普通に暮らしていた。もっとも、夜には家族に内緒でドッキリな体験をしてはいるのだが、
今日は、2人ともインタビューも挑戦もなく、のんびり出来たので映画を観ることになった。
映画のタイトルは「消えた島」
愛し合っていた2人がそこで暮らしていたが、ある日、漁に出た男が戻ると、島が無くなり、家族も消えて、一人残された男は、海に潜り、家族を探したが見つからず、やがて窒息により息を引き取った。という映画だった。
サ「俺もあの人と同じことになったら、死ぬ気でハルカを探すと思う」
ハ「ありがとう、サトシ」
そして2人はキスをした。これがいけなかったのか、次の日、
いつもの様に新聞を見たセンリは、あることに気が付いた。
セ「サトシ君、ハルカ、ちょっと見たまえ」
サ「なんですか?お義父さん」
この時もう既にサトシはセンリをそう呼んでいた。
ハ「何々、『ポケモンマスターのサトシ、トップコーディネーターと婚約疑惑発生!』」
そしてそれは、堂々と一面に載っていた。
そして、写真は昨日の物だった。
サ「これ、昨日の時のだ」
ハ「だったらちょっとやばいかも」
サ「何で?マスコミが来たら正直に全部話そうぜ」
ハ「それだけじゃ終わらないのも知ってるでしょ?あの事も聞かれるかも知れないし」
セ「ん?あの事とは何だ?」
サ「いえ、何でもありません」
そこへ、家の電話が鳴り響いた。
サトシ専用、ハルカ専用、家、この3つが同時になった。
おそらく家のはマスコミだろう、それはセンリがとる決まりだった。
サトシは番号を見た。マサラの番号だった。
サ「もしもし」
ハナ「サトシ、あなた婚約してるんですって?」
サ「ママも見たの?新聞」
サトシは、トウカに泊り込みで修行すると言っており、婚約の話はもう少し後にしようと思ったのに、
ハナ「疑惑って出てるけど、事実でしょう?」
サ「まあね」
ハナ「あら、意外と素直ね」
サ「どうせいつか言おうと思ってたんだからわざわざ隠す必要無いだろ」
ハナ「そうだ、サトシたまには家に帰ってきなさいよ」
サ「別にいいけど、何で?」
ハナ「あなたどうせマスコミに追われる羽目になるんだったら2人で逃げ込んできたらいいのよ」
サ「何で逃げ込むって言うのわざわざ」
ハナ「駆け落ちみたいで面白いと思うわよ」
サ「何で許されてるのに駆け落ちなんだよ。それじゃあハルカがよかったら明日にでもそっちに行くよ」
ハナ「待ってるわよ、サトシの選んだ女の子、親としては是非一度見てみたいわね〜」
そういい残し、ハナコは電話を切った。
ハ「ママさんから?」
サ「ああ、まあな、ハルカの方は?」
ハ「マサトとタケシから、今一緒にいるんだって」
サ「へ〜、で、何て?」
ハ「新聞の事」
サ「そっちもか、そうだ、ママが家来ないかって言ってたぞ」
ハ「サトシの家?」
サ「ああ、俺の家はまだマスコミに知られてないから、少し落ち着くまでそこに行くのも悪くないって思ってな」
ハ「うん、行く行く、サトシのママさんに会ってみたいかも」
セ「それなら船のチケットは私が手配しよう。2人とも目立ちすぎる」
サ「はい、お願いします」

サ「どうだ、これなら絶対ばれない」
サトシは自信満々に言った。そう言ったのも無理は無いだろう。
何故ならサトシは髪の毛を真っ直ぐに伸ばし、サングラスを掛け、南の島の柄が入った服を着ていた。
ハ「確かにばれないかも知れないけど、もうちょっとマシなの無かったの?」
同じように髪を真っ直ぐに伸ばし、サトシと同じ服装をしたハルカが呟いた。
唯一違うといえば、ハルカは髪を後ろで束ねてる事くらいだ。
サ「仕方ないだろ、もし買いに行ったら俺達の金はリーグから出してるようなもんだから買い物なんてしたらすぐ居場所がばれるし、何より買う時間がどこにあったんだよ」
ハ「別に慌てて行くこと無いからいつでも買えたかも」
サ「いつマスコミが殺到してきてもおかしくないのにか?」
ハ「あ、そういえばそうかも」
サ「たく、俺達の今の状況考えようぜ」
ハ「えへへ」
その時、ハルカの服のポケットから何かが落ちた。
ハ「あら?何これ」
ハルカはそれを見て、不思議に思い、拾い上げた。
サ「何だか紋章のようなものがあるな」
サトシが覗き込んで呟いた。
サ「よく読めないな、読めるのは、世界、破滅、神宿りし宝石?なんだこれ?訳わかんねー」
ハ「ここも読めるかも、えーっと、愛?」
そう呟いた時、石がとてつもない光を放ったかと思えば、石はハルカの右手の甲に取り込まれていった。
光が消えた時、ハルカの右の甲には何かの三角形が3つ集まり、三角形を作っていて、その左下の三角形が光っていた。
それを確認する暇も無く、ハルカは倒れた。
サ「おいハルカ、どうした?」
サトシが倒れそうなのを支えてやる。
サ「とりあえず息は落ち着いているし、どうなってんだ?」
とりあえず、病院に連れて行こうか迷っていた。
その頃、ハルカの精神の中
ハ「ここは、どこ?」
ハルカはすぐに、自分は全く知らない人がいるのに気付いた。
ハ「あなたは誰ですか?」
?「私はミイル、愛の神とも言われているわ」
ハ「愛の、神」
ミ「あなたは私に選ばれた。誰にも負けない。大切な人といたいという気持ちが、私とあなたを巡り合わせ、その気持ちに、私は共鳴した」
ハ「誰にも負けない、気持ち」
確かに自分は、いつでもサトシと共にいたいと思っている。
例え、自分以外に好きな人が出来ても、
そう思った時、ミイルは大きな光を放った。
ミ「やっぱりあなたは強い愛を持っている。ごめんなさい、私とあなたが共鳴したと言う事は、あなたもあいつに狙われることに」
ハ「あいつって、誰ですか?」
ミ「力の神と共鳴した男、ゲイラ」
ハ「え?ちょ、ちょっと待って下さい。それってもしかして「平和のゲイラ」と呼ばれた男ですか?」
ミ「その通りよ」
ハ「じゃ、じゃあ、幻の都市、昔沈没したと言われる都市、ラムリス王国は」
ミ「存在するわ」
ハ「そうですか」
何故こんな事を知っているのか?と疑問に思った人の為にお教えしよう。
この男とラムリス王国、これは昨日見た映画に出ていたのだ。
おとぎ話だと思ってたのに、実在した事にハルカは驚いた。
ハ「でもゲイラって、水死したはずじゃ」
ミ「したわ、でもその時力の神と共鳴し、助かったの」
ミイルは、どこか苦痛のような表情を浮かべた。
ミ「あれさえなければ、世界はもっと平和になっていたはず」
ハ「ミイルさん」
ミ「さあ、あなたはそろそろ戻る時間、大切な人が待ってるわ」
そう言ったと思ったら、ハルカは光に包まれ、消えていった。
ミ「あの男の子、フリルと共鳴するかも知れないわね」
ハルカがいなくなった後、ミイルはそう呟いた。

 
2.フリルとの共鳴

ハ「う、んん」
サ「ハルカ、気が付いたか」
ハ「あれ、サトシ、ここは?」
サ「船の中の一室だ」
ハ「私、どれ位寝てた?」
サ「10分位だけど」
それを聞くとハルカは、自分の右手の甲を見た。
ハ(夢、だったのかしら)
そう思った時、右手の甲にあのマークが浮かんだ。
そして、ミイルの声がした。
ミ(その紋章は、私とあなたが共鳴した証)
ハ「夢じゃ、無かったんだ」
サ「え?何が?」
ハ「え?あ、なんでもないかも」
サ「ふ〜ん、とりあえず船はマサラまで1週間位するから、のんびりしようぜ」
ハ「うん、そうだね」
そして、長い船旅を終えて、2人はマサラに降り立った。
サ「く〜、久しぶりだなぁこの空気」
ハ「でもいいの?ここで変装といちゃって」
サ「いいのいいの、ここにはマスコミなんていないからね」
ハ「サトシはマサラ出身なんだったら1人位ファンがいると思うけど」
サ「都会と違うから大丈夫大丈夫」
そう言ってサトシは歩き出した。とりあえずハルカも後についていく。
来る途中、何人か人にあったが、サトシが変装をといた理由がよく分かった。
全員、サトシを見ても都会のように殺到するのではなく、気軽に話しかけるような感じだった。
ハ(なんだか田舎って結構いいかも)
いつの間にか、1件の家の前にいた。
サ「着いたぜ、ここが俺の家さ」
ハ「へ〜」
ハルカは家全体を見回した。庭にはバリヤードが花に水をやっていた。
ハ「あのバリヤードはママさんのポケモン?」
サ「一応そうなってるけど、あいつ本当は野生なんだよ」
ハ「GETしてないの?じゃあ何で当たり前のようにここにいるの?」
サ「何でかしらないけど、ママが気に入ったんじゃないか?ああやって毎日ママの手伝いしてるし」
サトシの声に気付いたのか、バリヤードがこっちを向いた。
サ「バリヤード、ただいま」
バ「バーリバーリ」
サ「ママどこにいる?」
バ「バリ」
サ「分かった」
そう言ってサトシは家に入った。
サ「ただいまー」
ハ「おじゃましまーす」
ハナ「あらあらお帰り、意外と早かったのね」
サ「うん、まあね」
ハナ「その子がトップコーディネーターのハルカちゃん?」
ハ「どうも初めまして、ハルカです」
ハナ「あらあら、サトシもすみに置けないわね、こんな可愛いこと付き合ってるなんて」
ハ「そ、そんな、可愛いだなんて」
サ「照れることないじゃん、本当の事なんだから」
サトシの言葉に、赤かった顔がさらに赤くなった。恥ずかしいせいか、ハルカは頬を手で覆っていた。
サ「とりあえず俺の部屋に行こうぜ」
ハ「う、うん」
そして、サトシの部屋、
サ「ん?なんだこれ」
サトシは部屋に入ってすぐ、自分の足元に何かあるのに気付いた。
サ「あの時のやつに似てるな」
前と同じような紋章を見て、サトシは呟いた。
その中でサトシは、光輝いている文字を見つけた。
サ「なんだこの部分、光ってる、なんて書いてあるんだろ。え〜っと、勇気?」
その時、ハルカの時と同じ事が起こり、サトシは自分の精神の中へと呼び出された。
?「来たか、僕と共鳴する資格を持った者」
サ「お前は、誰だ」
?「僕の名前はフリル、風の神」
サ「その風の神が俺に何のようだ」
フ「君が僕を呼んだんだよ。心のどこかで思っている気持ちが、僕と君を共鳴させた」
サ「その気持ちって、何だ」
フ「大切な人を守りたい。その気持ちだよ」
サ「守る心、て事か?」
フ「ご名答、君の大切な人は、既に愛の神、ミイルと共鳴している。覚悟を決めろ、あいつは一筋縄じゃいかないから」
サ「あいつ?あいつって誰だよ」
フ「力の神と共鳴した男、その名はゲイラ」
サ「何!?」
フ「ラムリス王国に来い、そうすればゲイラに会える。
真実を知りたければ、来い」
そういい終わると、サトシを元の場所へと帰した。
フ「2人の絆は、あいつをも越える、なあ、ミイル」
フリルはそういい残し、消えた。
 

3.全ての始まり@

サ「う、んん」
ハ「あ、サトシ、気が付いた?」
サ「あ、ハルカ」
ハ「いきなり倒れたからビックリしたわよ」
サ「そっか、俺確か変な石を見つけて、光ってた部分を読んだら意識が遠くなって」
ハ「神に、呼ばれた」
サ「やっぱりハルカも、共鳴してるってのは本当か」
ハ「隠しててごめんね」
サ「別に謝る事じゃないさ」
そう言って起き上がり、ハルカにそう言った。
ハ「でも、言ってたらサトシは巻き込まれなかったかもしれないじゃない」
サ「言ってたら、俺は余計にフリルと共鳴してたと思うぜ」
優しく言い、ハルカの頬に触れる。その時、自分の手袋、いや、手の甲が光っているのに気付いた。
サ「何だ?」
不思議に思い、サトシは手袋を取った。三角形が3つあり、その右下が黄色く輝いている。
ハ「それ、私のとおんなじ」
そう言ってハルカは手袋を取った。だんだんとサトシと同じ紋章が浮かび上がってくる。
しかし、唯一違う所、それは光っている部分、サトシが右下、ハルカは左下、
サ「何か意味があるのかな」
そう言った時、サトシの紋章からフリルが、ハルカの紋章からミイルが現れた。
サ「うわっ!何だ!?」
フ「へー、無意識とはいえもう僕達を呼べるんだ」
ミ「当たり前よフリル、この2人は愛し合っている。その強い心に私達は共鳴したの」
フ「それ位分かってるよミイル、けどやっぱり前代未聞じゃねえか、どんなに強い心を持っていても、僕達を呼ぶには体力を大量に消費する。
けどこいつらは顔色一つ変えてねえじゃねえか」
サ「どうなってんだ一体」
サトシは頭の中が混乱していた。ハルカは意味が分からず唖然としている。
ミ「ごめんなさい、驚かせてしまったわね。私はミイル、そこの女の子と共鳴した者、
彼女のあなたを思う心が私と共鳴したの」
フ「やあ、僕はフリル、そこの野郎の君を思う気持ちに共鳴したのさ」
ミ「口が悪いわよフリル」
フ「ヘイヘイ、相変わらずミイルは真面目だなぁ、そんなんじゃもてないよ」
ミ「もてる事も出来ないわよ。それに、私にはあなたがいるから」
それを聞くとフリルは、少し照れくさそうにした。
サ「それより聞かせてくれないか、ゲイラに一体何があったのか、
それとラムリスに行くのとどう関係があるのかを」
ミ「少し、長引きますよ」
ハ「分かってます、でもどうしても知っておかないといけないと思うんです」
フ「いいんじゃねえ、どうせすぐに分かる事だし」
ミ「そうねフリル、ではお話しましょう。ラムリスとゲイラに何があったのかを」
静かに、ミイルは語り始めた。
 

4.全ての始まりA

ミ「その昔、ラムリスはどこよりも繁栄し、私達も安心してその身をおくことの出来るほど、人の心に欲が無かった。
町の人は私達の存在を隠してくれた」
サ「でもなんで、姿を隠す必要があったんだ?」
フ「僕達三神と呼ばれる理由はそこにあったのかも知れない。
僕達は、一つに集まった状態で人に触れられると、願いを叶えてしまう。そう作られた」
ハ「待って、作られたって事は、あなたたちは作られた神なの?」
ミ「そうではないの、私達の力を利用しようとした人間が作った物に、私達は閉じ込められた」
フ「その後、何とか逃げ切れた僕達は、ラムリスに逃げ込み、かくまってもらった」
ミ「人々は私達の居場所を作ってくれた。その恩返しもあったの、私達は、ラムリスの町に力を送り、町を豊かにした」
フ「でも、いつしかゲイラが現れた。ゲイラは、力の神ディアと共鳴し、ラムリスを絶望のどん底に叩き落した」
ミ「ディアも本当は優しかった。でもおそらく、ゲイラの欲に勝てなく、操られてるのだと思うの」
サ「ちょっと待ってくれ、ゲイラは力の神と共鳴して、助かったって」
フ「そう、一度は僕が選んだ人間に心ごと封じ込められた。
でも、あいつは蘇った。その勇者がいなくなったからだと思う」
ハ「勇者はどうしていなくなったの?」
フ「異世界から来たから、戻るべき場所へと戻った」
サ「な、なあ、まさかとは思うけど」
何故かサトシは少し弱気な声を出した。
サ「俺たちで、ディアとゲイラを止めろって言いたいの?」
ミ「あなた達だけじゃない、私とフリルが協力するわ」
ハ「でも、相手は力、勇気はともかく、愛で力に対抗できるんですか?」
ミ「できるわ、あなた達が私達の力を100%引き出すことが出来ればね」
フ「その答えは自分達で見つけるしか方法がない。だからヒントだけ教えるよ」
ミ「愛は勇気」
フ「勇気は愛」
ミ「この意味が分かれば、ディアに勝つことも可能です」
フ「そろそろ時間だ、じゃあな」
サ「ちょっと待てよ。ラムリスにはどうすれば行けるんだ?」
フ「時が来れば、自然に君達は導かれる」
そう言い残し、2人の神は姿を消した。
サ「時がきたらって、それまでどうしろと」
ハナ「2人ともー、晩御飯出来たわよー」
下から聞こえてきた声に、サトシはとりあえず考えるのはやめて、今この時間を楽しむ事にした。
サ「飯だってさ、行こうぜハルカ」
ハ「うん」
ハルカもそう思ったのか、元気にそう答えた。

サ「あれから一週間たったけど、なんにもないなぁ」
サトシがいきなり、そう呟いた。
ハ「え?何が?」
サ「ミイルとフリルと連絡が取れなくなってからちょうど一週間だろ」
ハ「あー、そういえばそうかも」
ハルカは自分の右手の甲を見た。あれから、あの紋章が見えることは無かった。
サ「まあ今は気にしない方がいいんだけどさ、その時がいつなのか、それだけは知りたかった」
ハ「でも、分からなかったから教えなかった。てことじゃないの?」
サ「多分な」
この一週間、特に目立つことも無く、過ぎ去っていった。
もっとも、サトシとハルカのドッキリ体験は別なのだが、
サ「しっかしマスコミもしつこいな」
ハ「今日のニュース見ても、まだ私達に婚約してるかどうか聞く気満々だったもんね」
サ「収まるまでまだ時間がかかりそうだな」
しかしこの時、このマサラがとんでもない事になるとは思ってもいなかった。

それからさらに一週間がたった。
サ、ハ「いただきまーす」
いつもの朝食、しかし、その平凡な日々は、そう長くは続かなかった。
『ピンポーン』
ハナ「あら、誰かしらこんなに朝早くに」
ハナコが行った後、サトシはテレビをつけた。
『えー、突然行方不明になった2人の消息は未だにつかめていません』
サ「相変わらず必死だなぁ」
ハ「そうねぇ」
ハナ「あら、ケンジ君いらっしゃい」
サ「ケンジ、そういえば最近あってないなぁ」
そう言ってサトシは玄関へと駆け出した。
ハ「あ、待ってよサトシ」
ハルカも後を追う。
そしてこの時、ニュースに小さな変化が、
『ただいま入った情報によりますと、2人の居場所はマサラタウンだという事が判明しました』

サ「ケンジ、久しぶり」
ケ「サトシ、帰ってたのか、で、そっちは彼女?」
ハ「どうも、ハルカです」
ケ「どうも、それにしても驚きだなぁ」
サ「何がだよ」
ケ「まさかあのサトシが恋人を連れて帰ってくるなんて」
サ「どういう意味だ」
ハ「サトシって鈍感だったもんね〜」
サ「ハルカまで言うか」
ハ「だってサトシ、ずっと前から私アプローチしてたのに全然気付いてくれなかったかも」
サ「う」
ケ「それよりサトシ、カスミにはもう連絡したか?」
サ「いや、忙しいだろうし、何より俺がハルカと付き合ってるって知ったら騒ぐだろあいつ」
ケ「そういえばそうだな、何もしないのが懸命だな」
ハ「あ!」
いきなり大声を出したハルカに、全員驚いた。
サ「な、何だ、どうしたハルカ」
ハ「マサト、カスミに会うって言ってたかも」
サ、ケ「ええ〜!」
サ「それってやばくないか?」
ハ「すっごくやばいかも」
そして、そのやばいと思ったのは正解だったと実感させられたのは、その3日後だった。

サ「そういえば最近、俺達の事言ってないな〜」
ニュースのチャンネルを回しながらサトシが呟いた。
ハ「そういえばそうねえ」
そう言った時、何故か妙に嫌な予感がした。
サ「な、なんか今」
ハ「嫌な予感が」
サ「とりあえず、オーキド博士の所に行こう」
ハ「それがいいわね」
なんとなくハルカも感じたのだろう。ハルカも了承した。
そして2人は、オーキド博士ぼ研究所へと向かった。
サ「こんにちは博士」
オ「おおサトシ、元気にしとるか」
サ「はい」
ハ「オーキド博士、お久しぶりです」
オ「ハルカ君も元気そうじゃな」
ハ「はい」
ケ「サトシ、今日は彼女を自慢しに来たのか?」
サ「別に自慢しに来た訳じゃ」
ケ「じゃあ何しに来たんだ?そんなにラブラブで」
サ、ハ「あ」
そういえば、ずっとハルカが俺の腕に抱きついていたのに、今更思い出した。
オ「ほほう、ケンジの言っていた事は本当じゃったのか」
サ「と、とりあえず俺達は庭に行ってるから」
恥ずかしいのでとりあえずこの場を離れよう。そう思ったのか、ケンジとオーキドにそう告げ、ハルカを連れて庭へと早足で向かった。
そしてこの時、早足だったために気付かなかった。
マスコミが、サトシの家へと行列を作って向かっている事に、
サ「あ〜、恥ずかしいったらありゃしない」
ハ「何で?別にいいじゃない、私達付き合ってるんだから」
サ「確かにそうだけどさ、茶化されると恥ずかしいんだよ」
ハ「茶化されるより見られたら恥ずかしい事してるのに?」
サ「そ、そりゃあそうだけど」
サトシの顔がみるみるうちに赤くなっていった。
ハ「それに比べたらまだ優しい方じゃない」
サ「まあ、そう考えればいいんだけどさ」
そう呟き、サトシは庭に出た。ハルカもそれに続く。
ハ「うわあ、おっきいかも」
サ「相変わらずここは広いなあ」
その時、サトシは何かに押し倒された。
ベ「ベーイ」
サ「何だお前か」
ベ「ベーイベーイ」
サ「ははは、くすぐったいってやめろよ」
そんな光景を、ハルカはただ不機嫌そうに眺めていた。
まるで、「そこは私の特等席よ」とでも言いたそうな顔をしていた。
その事に気付いたサトシは、少しだけ笑みを浮かべた。
サ「何だよハルカ、嫉妬してるのか?」
ハ「そうよ、悪い?」
サ「いや、むしろ嬉しかったりするな」
ハ「え?」
サ「ハルカが、俺を好きでいてくれてる証拠だから」
そう言ってサトシは立ち上がり、ハルカの手をとった。
サ「その辺散歩しようぜハルカ」
ハ「うん」
ベイリーフはこの瞬間、この2人の関係は深い事を直感的に知り、
邪魔しても意味がないと悟った。
しかしこの時、2人は知らなかった。
マスコミと2人のファンがオーキド博士の研究所に向かっている事を、

ハ「ふあ〜あ、何だか眠いかも」
大きく口を開けながらハルカが言った。
サ「そりゃあそうだろうな、ここあったかいし、昼寝するにはもってこいだよ」
そう言ったサトシもかなり眠そうだ。
ハ「じゃあ少し、お昼寝でもする?」
サ「そうするか、ふあ〜あ」
その答えを聞く前に、ハルカは既に深い眠りについていた。
サトシもすぐに深い眠りに着いたが、起きた時には凄い事になっていた。
ハ「ん、んん」
ハルカが小さくそう言って起きた時、何やらざわめき声が聞こえた。
サ「ですから、俺とハルカはですねえ」
サトシが何かを言っている。ハルカは細心の注意を払って、気付かれないように少しだけ目を開けた。
嫌な予感がしてたからなのだが、ある意味正解だった。マスコミやファンがこの場を囲み、サトシに色々と質問している。
「2人はいつから婚約してるのですか」
「2人の関係はどこまで行ってるのですか」
などが主な質問である。その質問に、サトシは正直に1つ1つ的確に答えている。
ファンのほうは、「私のサトシ君が」と嘆いている者や、「俺達のハルカを返せ」と自分勝手な事を言ってる者もいた。
とりあえずハルカは、起きてサトシを手伝ったほうがいいと思い、起き上がった。
ハ「どうしたの?サトシ」
サ「ああハルカ、起きたか」
ハ「ここ、ばれちゃったの?」
サ「みたいだな」
「ハルカさんは、サトシ君の事をどう思ってるのですか」
「2人の出会いはいつですか」
などの質問が起きたばかりのハルカにされた。
ハ「初めての出会いはミシロタウンです。私がトレーナーとして旅立つ為に初心者ポケモンをもらいに行った時です。
私は、サトシを愛してます」
その答えに、ハルカのファンは嘆き苦しみ、サトシのファンは騒ぎ始めた。「サトシ君から身を引け」と叫んでいる者もいた。
ハ「もし言葉だけで納得出来ないなら」
ハルカはそう言ってサトシと向き合った。
何をするか悟ったサトシは、本当に小さな声で聞いた。
サ「あれやるのか?」
本来ならマスコミに聞こえたのだが、ファンの声でかき消されていた。
ハ「だって、この方がみんな早めに帰るでしょう」
サ「それもそうだな」
納得したサトシは、ハルカの肩に手をかけた。ここで既に何人かは悟ったようで、さっきよりも騒ぎ始めた。
サトシは、ハルカと長い間口付けを交わした。
何故長いかというと、マスコミが写真をとる時間を与えてやったのだ。
マスコミがシャッターを切る音が無くなると、2人は唇を離した。
マスコミやファンはすぐに帰って行った。
しかし、一人だけ残って二人を見ている者がいた。
サトシは声をかけようとしたが、右手の甲を見てつい身構えた。
その甲には、2人と同じ紋章、そして、一番上の三角形が輝いている。
サ「お前、ゲイラか」
ゲ「ほう、俺の名前を知っているとは、ミイルとフリルに聞いたのか」
男は身構えようとしない。しかしサトシには分かった。隙が全く無い事が、
サ(くそ、俺じゃ歯が立たない)
ゲ「大人しくついてくるなら手荒なまねはしないが、どうする?」
ゲイラは怪しげな笑みを浮かべた。
サ「本当に手荒な真似はしないと言い切れるか?」
ゲ「約束しよう、俺の目的はお前らではない。その右腕の甲の神の宝石だ」
サトシはそう聞いた時、身構えるのを辞めた。
ハ「サトシ、本当に大人しくついていくの?」
サ「今の俺じゃ歯が立たない。あの言葉の意味が分かるまで待ってくれ」
あの言葉の意味、それはフリルとミイルが残した言葉だ。
ゲ「ふ、どうやら馬鹿ではないらしい」
ゲイラは、顔に少し笑みを浮かべた。
ゲ「だが、頭がいいせいで少し馬鹿になっているな」
その時サトシは、ゲイラから漏れたほんの僅かな殺気に気付いた。
しかもそれは、ハルカに向けられている。
サ「くっ」
ハルカの後ろに回りこみ、両手を広げて立った瞬間、ゲイラの姿と、腹部への強烈な一撃、
サ(な、何て、威力だ)
これが、力の神と共鳴した力、そしてサトシは、この時フリルとミイルの言葉の意味に気付いたが、すぐに気絶した。
ハ「サトシ!」
ハルカが悲痛の叫びを上げた。
ゲ「流石、フリルが認めた男だ。俺の僅かな殺気から俺がどこで攻撃するかに気付きやがった」
サトシを無造作に落とし、にやりと笑いながらゲイラは言った。
ハルカは、サトシを何度も呼んだが、サトシが起きる前に、自分も気を失った。
ゲイラが、軽く意識を失う程度に殴ったのだ。
ゲ「さてと、じゃあ連れて行きますかね」
ゲイラは2人を抱え、通常ではありえない跳躍力で、その場を去った。
 

5.いざ、ラムリスへ

フ「おい、起きろ」
サ「ん、んん」
いきなりフリルの声がして目が覚めた。
サ「あれ、ここは」
フ「お前の精神の中だ、前にも一度連れてきただろ」
サ「あ、そういえばここ前にも来たような」
フ「とりあえず、お前の体は今、ラムリスへと向かっている」
サ「何で分かるんだ?」
フ「ゲイラが動いた。あいつは神の力を手に入れるつもりなんだ」
サ「その宝を持ち、集まった宝に触れし者の望み叶えん」
無意識にサトシはそう呟いた。
フ「そう、奴の目的はおそらくそれだ」
サ「どうすれば止められる」
そんなサトシを見て、フリルはフ、と笑った。
フ「本当はもう気付いているんだろう、あの言葉の意味に」
サ「愛は勇気、勇気は愛」
フ「そう、その言葉の意味にあの娘が気付くことが出来れば、奴に勝てる」
サ「ハルカは、気付くだろうか」 フ「さあな、お前次第だ」
サ「何で俺なんだよ」
フ「それは自分で考えろ」
サ「そんなこと言ったって」
そこまで言った時、突然フリルの顔が険しくなった。
サ「な、何だよ、どうしたんだ?」
フ「どうやら、着いたようだな」
サ「幻影都市、ラムリス」
フ「まあ、そう呼んでも構わないな、実際に幻影なのだから」
サ「だけど、何故ここに連れてきたんだ?」
フ「俺達は、共鳴した魂が消えなければお前達とは離れられないんだ」
サ「それがどうしたんだ?」
フ「だが、このラムリスには、俺とお前を無理やり引き剥がす技術があるのだ」
サ「という事は、このまま寝てたらやばくねえ」
フ「それもそうだ、お前はラムリスに着き次第娘を連れて逃げろ」
サ「でも、ラムリスは何があるかわからねえじゃねえか」
フ「お前が、本当の意味に気付いたのなら大丈夫」
サ「仕方ねえ、奴に3つ揃わせたらどうなるかわかんねえもんな」
フ「そういう事だ、俺が奴を足止めする、ほんの少しの間だろうが」
サ「それじゃあお前が危険な目に」
フ「ミイルは止めるだろう。しかし俺はあの時何も出来なかった償いがしたい」
サ「・・・分かった」
フ「あと、ミイルも守ってくれないか、あいつは俺にとって大切な存在だ」
サ「ああ、守ってやる。俺もその気持ちはよく分かる」
サトシはハルカを思い出して言った。
すると突然フリルが笑った。
サ「な、何で突然笑うんだよ」
フ「そうだよなぁ、大切だよなぁ、何せ●●●(ピー)までする関係だもんな」
サ「な!お、お前見てたのか」
サトシの顔が真っ赤になる。
フ「俺だけじゃない、ミイルも見ていた。だが流石にその歳で●●●(ピー)までするとは思わなかったぜ」
サ「何回も言うな、恥ずかしいだろ」
フ「あっはっは、それじゃあ、頼んだぜ」
サ「ああ、任せとけ」
そう言った瞬間、サトシは光に包まれ、消えた。
フ「よし、俺も行くか」
フリルは、やはり怖いのか、足が震えていたが、自分の頬を叩いて気合を入れた。
フ「あいつも勇気を出して頑張ってるんだ。俺もかっこいいところ見せなきゃな、
じゃないとミイルに嫌われちまう」
 

6.フリルVSディア

サトシが精神の中でフリルと会話している間、オレンジ諸島にいた。
と言っても島にも船の上にもいない、海の上を走っていた。
周りの人々は、その光景をただ唖然として見つめていた。
中にはサトシやハルカのファンもいて、騒ぎまくっている人もいた。
しかしゲイラは、そんな事はお構い無しに走り続けた。
途中、いくつか船と激突したが、船のほうが粉々になっていた。
そして、突然その動きが止まった。
ゲイラは下を見た。
下には広大な海、その下に僅かに何かが見えている。
しかし、見えるのは神と共鳴した者のみだった。そう、見えているのはラムリス、
神の故郷ともいえる場所である。
ゲイラは静かに目を閉じた。
そしていきなり目を開けたと思うと、思いっきり飛んで、海へと飛び込んだ。
走るときのスピード、跳躍能力、海の中を進むスピード、どれも人間離れしていた。
だが流石に息が続かないと思うと、ゲイラの周りを空気の塊が包み込んでいる。
そう、ゲイラは既に自然をも自在に操ることが出来るのだ。
そのうちに、ゲイラはラムリスに降り立った。
ゲイラの力のおかげか、ここは水が入り込んでこなかった。
ゲイラは無造作に2人を降ろし、一息ついたその瞬間、サトシが起き上がり、ハルカを抱きかかえて一気に走り去った。
突然の事に驚いたゲイラだったが、すぐに追いかけようと足を踏み込んだ瞬間、目の前にフリルが現れた。
フ「ここは遠さねえぜ」
ゲ「どけ」
フ「嫌だねえ、お前が向かおうとしてる先には俺の大切な人がいるんだからな」
そう言った瞬間、ゲイラの声が変わった。いや、元に戻ったと言ってもいいだろう。
ゲ『貴様が俺の前に立ちふさがるとは、意外だな、臆病フリル』
フ「その声、ディア?いや、そんなはず無い、俺達の知ってるディアは」
デ『優しいディアだって言いたいのか?』
フ「こんな、人を傷つける事に何のためらいもない奴が、ディアの筈が」
デ『そんなつまらん感情は当に捨てた』
フ「!!!」
デ『貴様も捨てろ、そうしないと俺には勝てない』
フ「俺は、この気持ちだけは捨てない、例え、命を落としても」
デ『フ、ならば見るがいい、くだらない感情を捨てた俺の力を』
ゲイラ、いや、ディアとフリルは同時に地を蹴った。
ほんの数秒の間だったが、もの凄いスピードで戦っていた。
デ『ほう、成長したなフリル、この俺と対等に渡り合うとは』
フ「今のお前には、負ける訳にはいかない」
デ『そんなにもミイルが大事か?』
フ「!!!」
デ『そうだよなぁ、なんせ宝石から完全に出たら命に関わるほどあいつは重症だからなぁ』
フ「お前、それを知っててわざとこんな事を」
デ『フン、あいつの事なんてどうでもいいのさ、俺は俺の望みをかなえるだけさ』
フ「そんな事、俺がさせない」
デ『俺がさせない?俺の本気を見ても、そう言い切れるか?』
そう言った瞬間、ディアの姿が変わった。その姿はまさに、化け物と呼ぶにふさわしかった。
デ『これが、俺の本気の姿だ』
フ「お前、その力を解放したらどうなるか知っているのか!?」
デ『知らないねぇ、俺はただ力を求める。こいつと共にな』
そう言った瞬間、とてつもない力がフリルを包んだ。
フ「ちく、しょうが」

ミ「私、やっぱり戻って」
サ「駄目だ、悔しいけど、今の俺達じゃ足手まといになるだけだ」
ミ「でも」
サ「フリルは君が無事である事を願っている。だから行かせるわけにはいかない」
そう言った瞬間、もの凄い音と、プレッシャーを感じた。
ミ「な、何?」
サ「ハルカを頼む」
ミ「え?」
サトシは咄嗟に、ミイルにハルカを頼み、後ろを向いた。
さっきから建物がつぶれる音が聞こえている。
何が来るかは分かっている。そう思い、受け止める格好になった。
目の前の建物が壊れて、飛んできたのは、フリルだった。
サトシはうまくフリルを受け止め、ミイルの元へ連れて行った。
ミ「フリル!大丈夫?」
ミイルが心配そうに駆け寄った。サトシにハルカを任せて、
フ「へへ、いい所を見せようとして、この様だ、笑えるよな」
体中ボロボロだが、神であるために死ぬことは無い。
ミ「もういいわ、あなたは頑張ってくれた」
ミイルの目から涙がこぼれる。
ミ「私にとっては、それで充分」
サ「フリル、ハルカを連れてここから離れてくれないか」
フ「ああ、分かってるよ」
そう言ってフリルは立ち上がった。
フ「あいつと、決着をつけるんだな」
サ「ああ」
サトシは拳を握り締めた。右手の紋章が輝いている。
フ「やっぱお前はすげえよ、俺無しでそいつを使いこなすなんて、
でも気をつけろ、あいつの本気は恐ろしいほど強い」
サ「分かってる、だからこそハルカを頼む」
フ「この娘1人残して死ぬなよ」
フリルは最後にそういい残し、ミイルと共にその場を去った。
サ「ああ、分かってる、俺は死なない」
サトシはそう呟き、ゆっくりと歩き出した。
 

7.サトシVSディア

サトシは、ゲイラの姿のディアの元にいた。
ディアはゲイラの声で言った。
デ「ほう、一人か」
サ「お前ごとき俺一人で充分だ」
デ「俺がディアだと言ってもそう言い切れるか?」
サ「関係無い」
デ『何!?』
サトシがあまりにも挑発的に言ったので、ついディアは元の声になった。
サ「お前を放っておいたら、お前はハルカにも手を出す。その前に俺が倒す」
デ『面白い、フリルの力無しにどこまでついてこれるかな?』
ディアとサトシの戦いが始まった時、ハルカが目を覚ました。
ハ「う、んん」
フ「お、目を覚ましたか」
ハ「あれ?ミイルにフリル、ねえ、ここはどこ?」
フ「・・・・・・」
ミ「・・・・・・」
ハ「どうしたの?」
ハルカがそう聞いた時、後ろの方で大きな音がした。
ハ「え?何?」
ハルカは後ろを見た。音はやむことなく鳴り続けている。
ハ「ねえ、もしかして」
フ「ああそうだよ、後ろでサトシは戦ってるよ」
フリルは半ばやけくそに言った。
ハ「何でサトシ一人で行かせたのよ!」
フ「仕方ねえだろ!あいつの意思だ!」
ミ「正直言って今の私達では足手まといになるだけよ」
ハ「でも、何もしないで待つなんて出来ないよ」
そう言ってハルカは、音のした方へと走り出した。
その右手は、サトシの時と同じように輝いていた。
フ「全く、凄いよあいつらは」
ミ「私達抜きであそこまであれを使いこなしたのはあの2人が初めてね」
フ「あいつらなら、俺達の願いを叶えてくれる、そう思うよ」
ミ「そうね、あの2人なら、私の傷を癒してくれると信じましょう」
サ「はぁ、はぁ」
デ『どうした?息が上がってるぞ』
サ「まだまだ、やれるだけやってやるぜ」
サトシは、汗を拭い取った。その右手が輝きだした。
デ『なるほど、そこまで扱えるのか、人間ごときが』
サ「勝負はこれからだぜ」
ハ「サトシ!」
サ「ハルカ!?」
サトシは声のした方を見た。その瞬間をディアは見逃さなかった。
デ『隙あり』
サ「しまった!」
ハ「サトシ!」
ディアの拳が、サトシに当たった。しかし、ディアの拳は当たらなかった。
いや、当たってはいたが、それはサトシの残像だった。
サ「なーんてな」
サトシはいつの間にか、ディアの後ろに立っていた。
そして、ディアを払うように弾き飛ばした。左手で、
デ『ぐ』
サ「どうした?お前のスピードはそんなもんか?」
デ『くそ、これならどうだ』
そう言ってディアは、ハルカへと向かって走った。
しかしハルカは、微動だにしなかった。
デ『貴様、何故避けようとしない』
ハ「だって、サトシが助けてくれるもん」
サ「そういう事だ」
サトシは、ディアの目の前に出た瞬間、右手で力いっぱい殴り飛ばした。
デ『ぐああああ!』
サ「ハルカには指一本触れさせねえぜ」
ハ「サトシ!一人で先走って、心配したじゃない」
サ「悪い悪い、でもやっぱり、ハルカには危ない目に合って欲しくないから」
デ『くっくっくっくそんなつまらん感情、捨てないと俺には勝てないぞ』
ディアはゆっくりと立ち上がった。さっきまでとは比べ物にならない殺気が漂っている。
デ『俺はそのくだらない感情を捨てたおかげで、誰にも負けない絶対的な力を手に入れた』
サ「感情を捨てた先に、本当の力は無い!お前の力は偽りに過ぎない!」
デ『たわけ!感情を捨てた俺は最強の力を手に入れた!』
そう叫んだ途端、ディアは姿形を変貌させた。
サ「な!」
デ『どうだ、これでも俺の力が偽りだと言うのか?』
サ「ディア、残念だよ」
デ『何を言っている、残念なのはお前だろう。これから俺に叩きのめされるお前が残念と言うべきだ』
サ「そうまでして力を求めるか、ならば俺は、なんとしてもお前を止めないと駄目みたいだな」
デ『出来るかな?お前に』
サ「やってやる、お前の為にも俺は勝つ!」

サ(とは言ったものの、こんなのどうしろと)
サトシはディアを見た。とても対抗出来そうになかった。
サ(ハルカがあの言葉の意味に気付ければ)
チラリとハルカを見て思った。
サ(考えてる暇は無い、ハルカが気付くまで何とか時間を稼ぐ)
サ「ハルカ!」
ハ「え!?な、何?」
ハルカもまた、ディアの姿に見て唖然としていたが、サトシの言葉で我に返った。
サ「あの言葉の意味を考えろ!そこにこいつに勝つ方法がある!」
ハ「そ、そんな事いきなり言われても」
サ「いいから考えろ!それまで俺が時間を稼ぐから」
そういい残し、サトシはディアに突っ込んだ。
ハ(え〜と、え〜と)
ハルカは限界まで脳みそをフル回転させて考えた。
サ(頼むぞハルカ、お前にかかってるんだ)

フ「俺達も行くか」
ミ「でもフリル、あなたボロボロよ、私達は死なないけど、何年か眠りに着くのよ、人間にとっての死の状態になると」
フ「覚悟の上だ」
ミ「嫌よ、私を一人にしないで」
フ「大丈夫、置いて行ったりしないよ」
フリルはそう言って、ミイルに手を差し伸べた。
フ「俺達はいつでも一緒だ、そうだろ?」
ミ「ええ、行きましょう。私達は前に進まないといけないのよね」
フ「そういう事だ」

サ「でやあああ!」
デ『あまい!』
サ「ぐああ!」
さっきから、サトシが突っ込んではディアが吹き飛ばす。そんな事が繰り返されていた。
ハ「大丈夫?サトシ」
サ「大丈夫だから、お前は言葉の意味を考える事に専念しろ」
デ『だから言っているだろう、そんな事は無意味だと』
サ「最後まであきらめねえぞ俺は」
デ『フン、ならこれはどうする?』
ディアは、ハルカに衝撃波を飛ばした。
サ「くっ、間に合え」
サトシは全力で走った。そのおかげでギリギリ間に合った。
サ「どおりゃぁぁ!」
サトシが右手を振り上げた。衝撃波がはじき飛んで、上へと吹き飛んだ。
デ『それが甘いと言うのだ』
サ「!!!」
後ろでディアの声がしたと思ったら、自分の体が何かで貫かれた。
ハ「サトシ!」
後ろでハルカが悲痛の叫びを上げた。
ディアは、自分を貫いた何かを抜き、距離をとっていた。
サ「ぐふっ」
ハ「サトシ!サトシ!」
サ「ハルカ・・・ゴメンな・・・前の・・・約束・・・守れそうに・・・ねえ」
ハ「そんな事言わないでよ!生きて約束守ってよサトシ!」
サ「ざまぁ・・・ねえな・・・あの時・・・泣かせ・・・ないって・・・誓った・・・のに・・・俺の・・・せいで・・・泣かせ・・・ちまったぜ」
そう言ってサトシが、ハルカの涙を、震えた手で拭おうとした、しかし、寸前の所で、サトシの手が落ちた。
ハ「サトシ?」
ハルカはサトシの名を呼んだが、サトシは人形のように動く気配すらなかった。
ハ「サトシ、死なないでよ、私に泣いて欲しくないなら死なないでよ、
約束守ってよ、ねえサトシ!」
ハルカが懸命にサトシをゆすり続けた。
ハ「サトシ、お願いだよぉ」
ハルカがサトシを抱きしめる。ハルカの目から流れた涙が右手の紋章に落ちた時、紋章が輝き始めた。
2人はその光に包まれた。
 

8.決着、そして(最終話)

ハ「何?この光」
ハルカは辺りを見たが、さっきまでこんな所にはいなかった。
ハ「何だか懐かしい、随分前に感じた光」
ハルカがそう呟いた時、ハルカは信じられない声を聞いた。
サ「確かに、どこか懐かしい」
ハ「サトシ?」
ハルカは一瞬、我が耳を疑った。さっきまで微動だにしなかったサトシが喋ったのだ。疑って当然である。
しかしその疑いも、自分が抱きしめ帰された時に晴れた。
ハ「サトシ、生きてるんだよね、幽霊じゃないよね」
疑い気味に聞いていたが、その声は喜びに満ちていた。
サ「ああ、さっき受けた傷が、もう塞がってる、痛みも全く無い」
ハ「よかった、サトシが死なないで、本当によかったよ」
サ「ハルカのおかげだよ、この光からは、ハルカの優しさを感じるよ」
ハ「ねえサトシ、答え合わせしてくれる?」
サ「何の?」
ハ「言葉の意味」
サ「ああ、いいぜ」
ハ「あの意味って・・・・・」
サ「ああ、そうだよ」
ハ「確かに愛は勇気、勇気は愛、だね」
サ「ああ、そうだな、じゃあ行くか、あいつを止めに」
ハ「うん」

光が消えた時、流石のディアも我が目を疑った。
ついさっき貫いた傷が完治したサトシが立っていた。
デ『貴様、どうやって』
サ「今のお前と話をするつもりは無い」
そう言うと、サトシは走った。ハルカも後をついていく。
デ『フン、そんな足でまとい、連れてなんになる』
サ「足手まといかどうか、その目で確かめな」
そう言うと、ハルカは一定の距離で止まった。
デ『確かめるつもりなど無い、先に始末する』
そう言うとディアはハルカへ向かって駆け出した。
しかしその時、ディアは気付かなかった。サトシが僅かに笑ったことを、
ハルカは無言で、両手を前に差し出した。
デ『そんなひ弱な腕で俺の攻撃を止めるつもりか』
ハ「その通り」
ハルカもまた、顔に笑みを浮かべた。
その瞬間、ディアは吹き飛ばされた。
デ『何!?』
ディアは、明らかに信じられないと言う顔をした。
ハルカはただ、両手を前に出しているだけ、
サ「隙だらけだな」
背後で声がした。その瞬間、ディアは地面に叩きつけられた。
デ『ガハッ!』
サ「ちなみに、今俺は左手で殴ってるぜ」
デ『ふざけるな!』
ディアは、今度はサトシに殴りかかった。しかし今度は、自分の拳が止められた。何も無い場所で、
いや、あるにはある、サトシの周りに、青い水晶のようなものが出来ていた。
サ「ちなみにこれが、俺の本気の一撃だ!」
サトシの渾身の右アッパーが顎にヒットし、ディアは気絶した。

デ『う、うう』
サ「目が覚めたか」
ディアが次に目を覚ました時には、ディアは何かに縛られていた。
ディアは必死に引き契ろうとしたが、頑丈で千切れなかった。
サ「無駄だよ、ハルカの力が入ってるから」
デ『フ、俺を捕らえてどうするつもりだ』
サ「簡単な事だ、これからお前をその体から引き剥がす」
サトシがそう言った時、ディアは大きな力によって、自分とゲイラの精神の入った体から引き剥がされた。
サトシとハルカが右手を差し出した。もう二つの紋章が出て来て、元の形に戻った。
サ「ハルカ、行くぞ」
ハ「うん」
そう言って2人は、同時に紋章に触れた。
サ、ハ「この紋章に宿りし者を開放したまえ」
そう言った瞬間、宝石は粉々に砕け散った。
フ「ミイル、大丈夫か?」
ミ「大丈夫、なんともないわ」
フ「そうか、ありがとうな2人とも」
サ「気にすんなって」
ハ「お幸せに」
2人が消えた後、2人は光に包まれ、消えた。

サ「う、んん」
次にサトシが目を覚ました時、2人はあの時の庭にいた。
サ「ここは、オーキド研究所?」
ハ「んん〜」
ハルカも起きた。そして辺りを見て呟いた。
ハ「戻ってきたんだね」
サ「みたいだな」
ハ「何だか色々あって疲れたかも」
サ「じゃあもう一眠りするか?」
ハ「そうしましょ」
そして2人は、再び深い眠りに着いた。

人を愛するのは簡単だ

だがその思いを伝えるには勇気がいる。

愛が実れば、その人を本気で愛しているなら、本気で守ろうと思うだろう。

その気持ちが大きな「絆」を生む。

絆が出来れば、2人は本当に大切な人同士になれるだろう。

いつか出会う大切な人、その人を大切にするといい。

その愛は必ず実ると信じて・・・

この2人は見つけた。誰にも負けない絆を、

これは、そんな2人の、誰も知らない不思議な冒険になった。


 

二人の愛と絆がテーマです。
精神世界での二人とその姿が重なり、「大切なものを守る」ための思いが現れています。
それが力となり、願いもかなえられる。
なんともいい話ですね。
Commentator by 冬草


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