前へと向かって

サ「うわあ!」
叫び声を上げて、俺は飛び起きた。
タ「起きたか?サトシ」
サ「あ、タケシ」
タケシの顔を見て、何故自分はこんな事になっているのかを思い出そうとしたが、思い出せない。
マ「あ、サトシが起きた」
共に旅をしている、まだ自分のポケモンを持っていないマサトが呟いた。
その隣にいた、姉であるハルカ、このパーティーでは唯一の華だ。
その子が、自分の持っていた物を強引に弟に渡し、俺の方へ駆け寄ってきた。
ハ「ゴメンねサトシ、私のせいで」
この言葉で、自分が何故こんな事になっているかを思い出した。
確か、ハルカが風邪を引き、俺が付きっ切りで看病をしてやったんだ。
何故そうしたかは自分でもよく分からない。分からないけど、仲間とは少し違う感情を、俺はハルカに抱いていることは確かだ。
サ「気にすんなよ、元は俺が悪かったんだから」
ハ「でも」
サ「大丈夫だって、俺が丈夫だって事はお前が一番よく知ってるだろ?」
本当はタケシのほうが知っていたが、あえて俺はそう言う。
ハ「うん」
少し涙声のようにも聞こえたが、サトシは気にしなかった。
サ「だろ、大丈夫さ、こんな風邪あっという間に治してやるよ」
サトシが優しく、ハルカの頬を撫でてやる。何故かは知らないが、それをすると、決まってハルカは、俺の手に触れて、満足そうな顔をする。
その顔を見て安心して、微笑んだ瞬間、俺の上に大量の薪が降ってきた。
マ「あー、ゴメーンサトシ」
明らかにわざとらしい喋り方でマサトは謝った。
ハ「コラ、マサト!」
これも決まっていることだった。俺がハルカと仲良くすると必ず、マサトが何かをする。
ハ「サトシ、大丈夫?」
サ「ああ、まあな」
ハルカが薪をのけながら謝る。
ハ「マサトも謝りなさい」
ハルカは弟を叱ったが、その肝心の弟は既にピカチュウ達の所に逃げ込んでいた。
サ「いいよハルカ、いつもの事だろ」
ハ「だけど」
サ「気にすんな・・・」
そこで俺の言葉は止まった。オニドリルが落ちてくるのを確認してしまった。
サ「ハルカ!上!」
ハ「え?」上を見たハルカは、間一髪の所で、オニドリルとぶつからずに済んだ。その代わり、サトシがオニドリルの嘴が当たり、
頭から血が流れた。
ハ「サトシ!大丈夫?」
サ「ああ、何とか」
そしてオニドリルは、自分から落ちてきておいて、怒ってサトシを突付き始めた。
サ「いでででで」
ハ「ちょっとオニドリルやめてよ」
ハルカが止めたのが悪かったのか、余計に突付き始めた。
カチンと来たハルカ、
ハ「もういいわ、エネコ」
ハルカは、すぐ近くの木影で眠っていたエネコを呼んだ。
エ「ネ?」
ハ「オニドリルに吹雪よ」
サ「わー!ちょっと待てハルカ」
サトシが止めたが既に時遅し、エネコは吹雪をオニドリルにぶつけた。
オニドリルが凍りついた。もちろん傍にいたサトシも、
ハ「ああ!サトシ」
凍ってから自分のした事の重大さに気付いた。

サ「フー、一時はどうなるかと思ったぜ」
コータスの火炎放射で、何とか氷は溶けたが、あちこち霜焼けになっている。
ハ「ゴメンねサトシ、ゴメンね」
霜焼けしているサトシの手をさすりながら、ハルカは何度も謝った。
サ「気にすんなって、これだけで済んだんだし、オニドリルもどっかいったし、結果オーライだよ」
ハ「でも、でも」
サトシに嫌われてしまいたくない。ハルカの頭にはその事しかなかった。
サ「そんなに謝らなくてもいいぞ」
ハ「だって」
するとタケシが、突然立ち上がり、2人ともビクッとした。
タ「何だか俺はお邪魔なような気がするので向こうに言ってるよ」
そう言ってタケシは、マサト達の方へ向かった。
いきなり気まずい空気になった。
ハ「サトシ、さっきはゴメンね」
サ「いいって、気にするなって」
ハ「でもやっぱり」
サ「何か最近ハルカちょっと変だぞ」
ハ「変、そうかな?」
サ「ああ、いつもより積極的だし、謝る回数も増えてるし」
そこから、少し照れくさそうにしてサトシは続けた。
サ「いつものハルカの方がいいよ」
ハ「え?」
サ「さっきハルカを見てて、自分の気持ちに気付いたんだ」
ハ「自分の気持ち?」
サトシはまず、周りに誰もいないか確かめてから、声を低くして呟いた。
サ「俺は、ハルカが好きって事」
ハ「私も、サトシが好き」
ハルカが、ちょっと下を向いていった。
ハ「私、サトシに嫌われたく、なかったから、変だったのかも」
サ「嫌いになんてならないさ、むしろどんどん好きになっていくよ」
ハ「ありがとう、サトシ」
サ「さ、みんなの所に行こうぜ」
ハ「サトシ、そういえば風邪は?」
サ「いつの間にか吹っ飛んだ」
元気に手をふるサトシを見て、自然に手が出て、サトシの手をとった。
ハ「行きましょ」
サ「ああ」
2人は走った。前へと走った。後ろを向かずにただひたすら前へと、いつしか見える。2人だけのゴール地点へと向かって


 

何か失敗する度に自分を責めてしまうハルカ。
そんな彼女でも、サトシは優しく受け入れられると思います。
そんな心の大きさも彼のいいところの一つですね。
だからこそハルカももっと甘えられるんじゃないでしょうか。
Commentator by 冬草


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