飛行機の中で

「オレンジ諸島行き出航します。」
タ「よし、乗るぞ。」
マ「わーい。」
サトシ達一行は、夏休みという事でオレンジ諸島へ遊びに行く事にした。

飛行機の中

席は、窓側からタケシ、マサト、サトシ、ハルカという順で座った。
ハ「オレンジ諸島ってどんなところなのかな?」
サ「行ってみればわかるさ。」
無事離陸した。すると、スチュワーデスがこっちにやってくる。
ス「お飲み物はいかがですか?」
ハ「私ココアがいい!」
マ「僕オレンジジュース!」
ス「わかりました。」
飲み物を受け取る二人。
タ「こぼさないよう気をつけろよ!」
といったものも、いきなり溢してしまうハルカだった。
ハ「あ!ごめんサトシ・・・。」
ココアはドバッとサトシの服にかかる。
サ「おいおい、どうするんだよ。」
ハ「ごめんね、今拭くから!」
ハルカはハンカチを取り出し、サトシのズボンを拭く。
サ「いいよハルカ、自分で拭くから。」
その瞬間だった。
「グラグラグラグラグラグラ!!!!!!」
ハ「キャ!地震!?」
サ「空中なのに地震なわけないだろ。」
いきなり飛行機が大きくゆれる。サトシのズボンを拭いていたハルカは、サトシに寄りかかる形になった。
ハ「怖かった・・・。」
サ「ハルカ・・・苦しい・・・。」
ハ「あ!・・・ごめんね・・・。」
飛行機のゆれは止まらず、パニック状態になった。
「ただいま、緊急事態のため、とても危険です、皆さん、落ち着いてください。」
アナウンスがながれる。
サ「落ち着けって落ち着けるかよ・・・。」
ハ「怖いよ・・・サトシ・・・。」
サ「落ち着けよ。」
ハ「寄りかかってもいい?」
サ「大丈夫だよ、安心しろよ。」
ハ「怖いんだもん。」
サ「わかったよ。つかまってろ。」
「ははは・・・この飛行機は、われらアクア団がのっとった!」
アナウンスが聞こえる。
サ「なんだと!」
スチュワーデスが叫ぶ。
ス「みなさん、奥にある程度広いホールがあります、そこに避難してください!」
皆ぞろぞろと非難をはじめる。
サ「・・・皆、先に言っててくれ、俺はアクア団を止める。」
タ「無茶だ、止めろ!」
サ「そんな事、やってみなくちゃわからないだろ!」
タケシ達は止めようとするも、非難しようとする客に押されて避難所に行ってしまう。
タ「サトシ!無事でいろよ!」
マ「サトシ、お姉ちゃんを宜しくね!」
サ「ああ!・・・ん?・・・って何でハルカがいるんだよ!」
ハ「サトシの側にいないと・・・なんか不安で・・・。」
サ「早く行けよ!」
ハ「いや!」
サ「・・・ったく、早く行けよ、ほら!」
その瞬間、サトシ達の目の前にアクア団の幹部が現れた。
幹「おやおや・・・逃げ遅れたのかな?」
サ「なぜこんな事をするんだ。」
幹「ふふふ・・・この飛行機にはわれわれにとっては邪魔なものがあってね・・・。」
サ「なんだと・・・。」
幹「この飛行機にはちゃっかりとマグマ団があるものを乗せてしまってね・・・それはわれわれアクア団の行動を阻むものなんだ。」
ハ「・・・。」
幹「この飛行機には自爆装置を仕掛けさせてもらったよ・・・後三分で爆発する。」
サ「なんだと!!!」
幹「せいぜい足掻くがいいさ・・・ハハハ!!!」
そういうと幹部は、その場から消えた。
ハ「私たち死ぬの・・・そんなの嫌だよぉ・・・。」
サトシはハルカの肩をぽんっとたたく。
サ「大丈夫だ・・・俺がどうにかする。」
ハ「でも・・・どうやって?」
サ「ハルカ、俺の側を離れるなよ!」
ハ「う、うん!」
ハルカはしっかりとサトシの腕を掴む。
サ「おいおい、別につかまらなくたって・・・。」
ハ「なんだかこっちのほうが安心するの!」
サ「やべ・・・そんなこと言ってる暇は無かったぜ!」
二人はダッシュで避難所へ向かう。
サ「大変だ皆!」

サトシが非難していた人々に叫ぶ。
マ「サトシ、お姉ちゃん!」
タ「無事だったか!」
サ「皆、急いでこの飛行機から脱出する必要がある。」
タ「どういうことだ?」
サ「・・・爆発する・・・それも、もう後少しで・・・。」
マ「なんだって!!!」
飛行機はすでに、低い上空を飛んでおり、いつ墜落するかわからない。
サ「スチュワーデスさん、何か脱出する方法はありませんか?」
ス「・・・パラシュートが機内にあります、たぶん全員分あるかと・・・。」
サ「わかりました、それじゃあ急いで配ってください!」
ハ「サトシ・・・大丈夫かな・・・。」
サ「安心しろ・・・。」
優しくハルカの頭をなでるサトシ。恐怖のあまりで震えていたハルカが、安心したかのようにサトシにもたれかかる。
サ「よし、俺たちも行くぞ!」
しかし・・・。
ス「パラシュートが二つ足りません!」
不幸中の不幸・・・サトシとハルカの分だけパラシュートが足りなかったのだ。
サ「ちっ・・・。」
ハルカの体が再び震えだす。サトシの体にも震えが襲う。
ハ「そんな・・・。」
サ「とりやえず俺たちに構わないで、早く脱出してください!」
ス「でも・・・。」
サ「はやく!!!」
「バクハツマデ、アト30ビョウ・・・。」
ス「皆さん、降りてください!!!」
いっせいに飛び出す人々。
ハ「サトシ・・・。」
サ「ハルカ・・・。」
ハルカの目からは涙がこぼれる。
サ「・・・俺だって・・・泣きたいぜ・・・。」
ピ「ピカ・・・。」
サ「ピカチュウも行けよ、早く!」
ピ「ピカ・・・。」
ピカチュウは首を横に振る。
サ「行け!!!」
ピカチュウは、サトシの一喝で後ろを振り返りながら飛び降りた。
サ「ピカチュウ・・・。」
「バクハツマデ、アト5ビョウ・・・。」
サトシはすばやく、ハルカを強く抱きしめ、耳元でつぶやく。
サ「ハルカ・・・俺、おまえの事が、大好きだ!」
ハ「サ、サトシ!?」
ハルカを抱き上げ、サトシは飛び降りた。もちろん、パラシュートは無い・・・。
ハ「サトシ!!!」
サ「ハルカ・・・おまえだけは、死なせはしない!」
急降下する二人。助かる保証は無い。
サ「うわああああああ!!!」
ガサガサガサガサ・・・ズド!
ハ「ん・・・。」
二人はある森の中に落ちた。
ハ「サ・・・サトシ・・・。」
ハルカが起きた。どうやらハルカは無事だったようだ。
ハ「サトシ?」
ハルカは、サトシにしっかりと抱きしめられていた。まとめると、そのおかげで助かったといってもいいだろう、傷一つついていないのだ。
ハ「サトシ、サトシおきて!」
サトシの体を揺らし、懸命に名前を叫ぶハルカ。
ハ「サトシ・・・そんな・・・。」
サトシの頭からは大量の血が流れていた。
ハ「・・・。」
ハルカはとりあえず、近くに誰かいないか叫ぶ。
ハ「誰かいませんか!!!」
そこには一人の男の人がいた。
男「どうかしたんですか!?」
ハ「大変なんです・・・。」
男はサトシを見ると、急いで携帯で救急車を呼ぶ。
ハ「サトシ・・・死んじゃいやだよぉ・・・。」
救急車が到着した。

「早くしないと危険だ!!!」
ハ「私も一緒に連れてってください!」
「君は?」
ハ「旅仲間・・・いや、私の大切な人なんです!」
連絡してくれた男の人にお礼を言い、車に乗り込む二人。
「一体なぜこんな事になったんだい?」
ハルカは長々と事情を説明する。
ハ「・・・というわけなんです。」
「なんだって!・・・よく助かったね。」
ハルカはサトシを見ると、そのたびに間に涙があふれる。
ハ「サトシ・・・。」
サ「ん・・・ハ、ルカ・・・。」
ハ「サトシ!・・・サトシ!?」
「どうやら目がさめたみたいだね。」
といってる間にも病院に到着した。
ハ「サトシ・・・無事でいてね・・・。」
やさしくサトシと手を握り締め、サトシを見送るサトシ。
「大丈夫だ、全然命には問題ない。」
サトシは、左腕を骨折していたものも、とりあえず頭の傷を縫うだけで、全然命に問題はなかった。
「うそみたいだよ・・・まるで奇跡だ!」
しかし、三日間の入院の必要があった。
サ「ハルカ・・・ごめんな。」
ハ「何で誤るの?」
サ「だって・・・いろいろ心配かけたじゃないか。」
ハ「何で私たちが助かったのか・・・わかる?」
サ「???」
ハ「私たちが助かったのは・・・サトシの勇気のおかげだよ。」
サ「・・・。」
ハ「サトシが私をしっかりと抱きしめて・・・・守ってくれた・・・すごくうれしかった。」
サ「ハルカ・・・。」
ハ「サトシ・・・私のこと好きって言ってくれたよね・・・私もサトシのこと大好きだよ!」
ハルカはそういい終えると、今までこらえていた涙が一気に溢れ出す。
サ「あれ・・・俺、ハルカの事好きなんて言ったっけ?」
ハ「え?・・・いったよ!たしか飛行機から飛び降りるときに・・・。」
サ「・・・。」
ハ「・・・。」
ハルカが言いかけたとたん、何かが起こった。
ハ「え!?・・・。」
サ「ハルカ・・・大好きだ!」

 
退院後、二人はタケシ達と合流するため旅を再開した。
ハ「マサトどこにいるのかな・・・。」
サ「俺たちはもう死んだとか思ってたりしたな。」
ハ「それってひどいかも!」
サ「冗談だよ・・・きっとどこかで俺たちを探してくれているさ。」
ハ「そうだよね!」
ハルカはそっと、サトシの手を握る。
サ「どうしたんだハルカ?」
ハ「いや・・・二人で旅ってのも・・・なんかいいかなって・・・思っちゃったりなんかして・・・。」
サ「・・・。」

 
タケシ達と再会したのは、この一ヶ月あとのことだった。それまでは、2人っきりで、辛い事も楽しい事も一緒に乗り越えてきたのだった。


 

突然の事件に巻き込まれる一行、
危険に曝されながらもハルカを守るために必死になるサトシ…
その力がハルカを救い、またハルカの想いがサトシを助けることにもなります。
お互いを大切に思う気持ちが良いですね。
Commentator by 冬草


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