転入生

ここはホウエン地方のとある小学校。
その小学校の五年生のあるクラスは、いつもとぜんぜん変わらない様子だった。
後ろでは男子がワーワー暴れているし、女子は集まってなにやらベラベラ話している。
しかし、たった一つ変わった事があった。

チャイムが鳴って、先生が入ってくる。そして、先生の後ろには一人の少年がいた。
先「紹介する、今日からこのクラスでみんなと一緒に過ごすことになったサトシ君だ。」
サ「サトシといいます、宜しくお願いします。」
クラスの女子たちはざわつき始めた。
A「ちょっと、あの転入生かっこよくない?」
B「かっこいいよね!!!」
先「静かにしなさい!・・・サトシ君の席は・・・ハルカの隣だ。」
ハ「え、え!?」
A「ハルカずるい〜。」
C「いいなぁ・・・ハルカ。」

そして一時間目(体育)

先「今日は鉄棒の練習だ。来週さかあがりのテストをやるから、そのつもりで頑張るように。」
A「ええ!?」
B「聞いてないよ・・・。」
ハ「そんな・・・私鉄棒苦手なんだよな・・・。」
先「よし、じゃあ教室の席の隣同士の人とペアになって練習をはじめろ、悪いところとか見つけたら教えてやるんだぞ!」
ハ「えっ・・・私、サトシ君とだ。」
みんなはさらに嫌な顔をしてしぶしぶ鉄棒に向かった。ハルカはサトシのほうへ向かった。
ハ「あ、あの・・・サトシ君、よろしくね・・・。」
サ「ああ。それじゃあ行こうぜ。」
二人は鉄棒の前に来た。
ハ「サトシ君、先やっていいよ。」
そしてサトシはさかあがりを余裕の表情で終えた。
ハ「す、すごいかも・・・。」
サ「じゃあ、えっと・・・ハルカ・・・だっけ、やってみろよ。」
ハ「う、うん。」
ハルカは何回かさかあがりをするが、失敗の連続だった。
ハ「ご、ごめん・・・私・・・さかあがりできないんだ。」
サ「足を曲げてるからいけないんだ、もっと足を伸ばして自信を持ってやってみろよ。」
ハ「う、うん。」
ハルカは再チャレンジしたが、少しはよくなったものも、結局失敗してしまった。
ハ「・・・。」
サ「ハルカは回るときに怖いと思っちゃうからいけないんだ、もっと落ちついて。」
ハ「うん、ありがとう。」
だが、どんどんよくなっていくにもかかわらず、成功にまでは及ばなかった。
ハ「なんでできないのかな・・・。」
サ「よし、俺が足を持っててやるから、一回形を覚えろよ。」
ハ「え?・・・あ、うん。」
サ「まずは勢いよく助走をつけて足を上げるんだ、怖がらず、落ち着いて。」
ハ「う、うん。」
ハルカは勢いよく足を上げた。サトシはその足を掴み、形を作った。
サ「このまま足を曲げないで回転するんだ、何回か形を覚えればなれるさ。」
ハ「うん。私、絶対できるようになる!」
そして二人は、この形を覚える練習を何回かやった。
サ「よし、今度は自分だけの力でやってみろ。」
ハ「うん。」
ハルカは自分だけの力で練習どうりやった。足を上げて、曲げずに回転した。
ハ「きゃ!」
しかし着地に失敗し、後ろにいたサトシに向かって倒れ込んでしまった。
サ「ハ、ハルカ・・・。」
二人は地面に寝込んで抱きついているような形になっていた。
ハ「あ!ご、ごめんねサトシ君・・・。」
二人は慌てて起き上がると、顔を赤くして黙り込んでしまった。どうやら誰にも見られていなかったようだ。
サ「で、でもハルカ、成功したじゃないか!」
ハ「え、あ!」
サ「やったなハルカ!」
ハ「うん!ありがとうサトシ君!」
サ「サトシでいいよ。」
体育の授業を終え、二人は仲良く話をするようになった。

放課後

ハ「サトシ、一緒に帰ろう?」
サ「え?・・・ああ。」
ハ「サトシってもう友達できた?」
サ「ああ、男子は全員と友達になれたぜ。女子はまだ一人だけどな!」
ハ「女子?」
サ「え?女子ってハルカの事だぜ。」
ハ「ん、うん。」
サ「?」
ハ「・・・サトシって運動神経いいんだね、鉄棒なんて軽々とできてたし。」
サ「あれは運動神経の問題じゃないと思うんだ。」
ハ「え?」
サ「あれは鉄棒を怖いと思ってるからできないんだ。」
ハ「・・・。」
サ「もうハルカは鉄棒なんて怖くないよな?」
ハ「え?う、うん♪」
サ「ハルカって面白いやつだな、俺そういうやつ好きだよ。」
ハ「えっ・・・。」
サ「え、い、いや、別にたいした意味はないぜ、気にするなよ?」
ハ「うん!」
ハルカは周りに誰もいないことを確認すると、そっとサトシの手を握る。
サ「ハルカ!?」
ハ「私もサトシの事大好きだよ!これから宜しくね♪」
サ「あ、ああ。」

翌日

サ「ハルカ、おはよう。」
ハ「おはようサトシ♪」
サ「今日が最後のチャンスだ、今日の体育でさかあがりを完璧にしようぜ!」
ハ「うん♪」

体育の時間

先「いよいよ明日がテストだ、できなかったやつは体育の評価を下げるからな!」
みんなは嫌がっている様子だったが、ハルカは逆に、この時間を待っていたかのようにニヤニヤしている。
A「どうかしたの?ハルカ、なんかいいことでもあった?」
ハ「え、いや、なんでもないかも・・・。」
練習に移った。ハルカはサトシと楽しそうに練習していた。
D「なんだかハルカってサトシ君と仲いいよね、いいな〜。」
練習はしたのだが、どうしても着地がうまくできずに終わってしまった。

帰り道

サ「ハルカ、このままじゃ失敗に終わってしまう、この後暇か?」
ハ「え?・・・うん、別に用事はないけど。」
サ「だったらこの後練習しようぜ、付き合ってやるからさ。」
ハ「え!?・・・あ、ありがとう、すごくうれしいかも♪」
サ「よし、じゃあ学校集合な!」
ハ「うん!」

学校

ハ「サトシ〜おまたせ!!!」
サ「よし、じゃあさっそくやるか。」
ハ「うん。」
ハルカがやってみた。やはり着地ができなかった。
サ「よし、また形を覚えるか、俺が背中持っててやるから、やってみろよ。」
ハ「うん。」
サトシがおさえていれば、きれいに成功する。
サ「この形を覚えていればいいんだけどなぁ・・・もう一回やってみてくれよ。」
ハ「うん。」
ふたたび失敗。
サ「怖がってるんだよ・・・。」
ハ「・・・。」
サ「もし落ちそうになったら、俺が掴んでやるから、やってみろよ。」
さっきよりかはうまくできた。
サ「この調子で行けばできるようになるさ、頑張れ!」
ハ「う、うん!!!」
そして、あたりが真っ暗になった。
サ「よし、暗くなってきたからラストだ。これで一気に決めるぞ。」
ハ「わかった。」
そして・・・。
ハ「やった、やったかも!できた!やった〜。」
やっとの事で成功。
サ「やったぜハルカ!!!」
ハルカはサトシに跳びつき、嬉し涙を流していた。
サ「おいハルカ、そんな・・・泣くほどじゃないと思うけど・・・。」
ハ「なんだかすごくうれしい・・・ありがとうサトシ、サトシのおかげだよ・・・。」
サ「大げさだぜ・・・帰るぞハルカ、疲れただろう?」
ハ「うん・・・。」
ハルカは相当疲れていたのか、サトシに抱きついたまま眠ってしまった。
サ「おいおい・・・。」
仕方なくサトシは、ハルカを負ぶって送っていくことにした。

ハルカの家

呼鈴を鳴らすサトシ。
母「あら、あなたが噂のサトシ君ね!ハルカがいつもお世話になっています・・・ってハルカ!」
サ「ああ、ハルカなら、さっき鉄棒の練習で疲れて眠っちゃって・・・。」
母「あら、ごめんなさいね、ハルカ、起きなさい。」
ハ「・・・え?」
母「全く、サトシ君に迷惑ばっかりかけて・・・。」
ハ「え、あ!サトシ・・・ごめん・・・。」
ハルカは顔を赤めて下を向いてしまった。
母「ハルカったらね、昨日ずっとサトシ君の事を話していたのよ♪・・・そしてね、ハルカ、サトシ君の事がね・・・。」
ハ「ちょ、ママ!やめてよ!」
母「ふふふ・・・。」
サ「???」
母「ハルカ、鉄棒のテスト、見に行くからね!」
ハ「ちょっと、いいよ!」
母「サトシ君、ありがとね、気をつけて帰るのよ!」
サ「はい。」

テスト当日

先「よし、じゃあテストをはじめる。」
テストが始まった。男子はほとんど成功、女子はほとんど失敗していく。
先「次、サトシ!」
サ「はい!」
余裕の成功。
A「すごい・・・かっこいい〜。」
B「いいなぁ・・・。」
先「次、ハルカ!」
ハ「は、はい。」
E「ハルカってさかあがりできたっけ?」
F「去年はできてなかったよ。」
サトシはアシスタントのため、ハルカの側にいく。影では、ハルカの母親も見ていた。
先「よし、じゃあいいぞ。」
ハ「この日のために頑張ってきたんだもん・・・頑張らなくっちゃ!」
サ「(頑張れハルカ、おまえならできる!)」
そして・・・。
先「よく頑張ったな!完璧だぞ!」
E「うそ!ハルカ・・・すごい!」
F「へぇ・・・ハルカってさかあがりできるようになったんだ。」
サ「やったぞハルカ!!!」
ハ「サトシ・・・やった!」
サトシはやさしくハルカを抱きしめ、恥ずかしながらもこういった。
サ「ハルカ、俺、おまえが好きだ・・・その・・・女の子として・・・。」
ハ「サトシ・・・私も・・・サトシが好き・・・。」
そしてみんなの前で口づけを交わす。
皆「ヒュ〜ヒュ〜!!!」
母「・・・ハルカもこんな年になったのね・・・。」

この後サトシは、ハルカの家で、さかあがりができるようになった記念と、二人の愛を祝福するパーティーが開かれた。
ハ「サトシ、これからもずっとずっといっしょにいてね!」
サ「ああ、これからよろしくな!」


 

学園モノまで来ましたね。
よくあるネタ(!?)ですが、サトシとハルカに当てはめてみるっていうのも面白いです。
学生ってやっぱりこういうのが楽しいですねw
Commentator by 冬草


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