とある森での出来事

1.とある森での出来事

「ねぇ〜、タケシ〜、ここどこ〜」
いかにも疲れたという声でハルカが聞いた。
「さぁ〜、どこだろう」
「ねぇタケシ、まさかとは思うけど・・・」
「ああ、迷った」
『ええ〜!』
タケシ以外の全員が言った。
「なんだよ、またかよ」
「一体いつになったら町に着くのよ〜」
「わからん」
タケシはハッキリと答えた。
「何かもう嫌になってくるかも」
「ハルカ、とりあえず行こうぜ、そしたらきっと出られるさ」
「何の根拠があってそんな事言ってるの?」
「いや、ハッキリ言って何の根拠もない」
「じゃあ何でそんな事いってるのさ」
「いや〜、口で言うより見てもらった方が早い」
そう言ってサトシが指さした先には、スピアーの巣があった。
「確かに、歩いた方が安全だね」
「だろ」
「え、何が」
いままでずっと俯いてたハルカが聞いた。
「ハルカ、とにかくここを離れよう」
「私、疲れた」
ハルカはいかにも駄々をこねそうだった。しかし、ここで騒いだら気付かれる。
「しょーがねーな、おぶってやるから早く乗れ」
「うん」
ハルカはいつものように明るい笑顔で頷いた。それを見たサトシは、帽子を深く被る。
「?どうしたの?サトシ」
「なんでもない」
そう言って目をそらす。その時のサトシの心の声
(なんだろう、いつもと変わらない笑顔のはずなのに、何かが違う)
「でもサトシ、顔真っ赤だよ」
「なんでもないったら」
思わず大声で叫んでしまった。スピアーがこちらに気付き、向かってくる。
「まずいぞサトシ、見つかったぞ」
「やべ、ハルカ、乗れ」
「・・・・・・」
ハルカにサトシの声は聞こえていない。考え込んでしまっている。
「クソッ」
サトシはハルカを抱き上げた。
「え、サ、サトシ?」
「今は戸惑ってる暇はないぞ」
そこでハルカは初めて、自分の置かれている状況を理解した。
スピアーが襲って聞ている。
「しっかり捕まってろよ」
「う、うん」
するとサトシはもの凄い勢いで走り始めた。
その時のハルカの心の声
(サトシ、かっこいい。なんだか、幸せ、ずっとこうしていたいな)
しかし、マサトは、
「ねぇタケシ」
「何だ?マサ・・」
タケシは、マサトが凄く怒っていることがすぐに分かった。
「後で、サトシ動けなくしていい?」
「駄目だっていってもするんだろ?」
「・・・うん」
「すきにしろ。そのかわり、ハルカに何言われても知らねーぞ」
「?どうゆうこと?」
「さあな」
タケシは、後ろを走ってるサトシを見て、ニヤニヤしながら言った。

 
2.恋の試練?

「つ、疲れた〜」
そういってサトシはそこにあった切り株に腰を下ろした。
「サトシ、お疲れ様」
そう言ってタケシは、サトシに水筒を渡した。
「サンキュー」
そう言ってサトシは、中身を半分くらい飲み干した。
どうにかスピアーはまけたが、よけいに道に迷った。
ハルカは、サトシに背を向けて座っていた。しかし、怒っているわけではない。
さっきの事を思い出し、顔を赤くしてブンブンと顔を振る。
それを何度も繰り返していた。
「タケシ、私ちょっと水汲んでくる」
「どこにあるか分かるか?」
「ついていこうか?」
ハルカの身を案じていった言葉、しかし、ハルカは断った。
「大丈夫、サトシは休んでて」
「・・・分かった、気をつけろよ」
「うん、ありがと」
そう言ってハルカは、一人森の中へ消えた。
「ちゃんとここまで戻ってこれるかな?」
「大丈夫だろ」
「でもやっぱり心配だ、オオスバメ、出て来い」
「スバツ」
「オオスバメ、出来るだけばれない様にハルカを守ってやってくれ」
「スバッ」
オオスバメが飛び立った後。
(チャンス)
「たぁーーーー」
「え?」
「お、おいマサト」
ドゴッ
「グフッ・・・」
マサトの捨て身タックル、急所に当たった、効果は抜群だ。
ドサッ
サトシは倒れた。マサトは1829の経験値を手に入れた。
「マサト、そこまでするか普通」
タケシの言葉が耳に入っていないのかマサトは、タケシを無視してサトシに歩み寄った。
「ねぇサトシ、僕すっごく怒ってるんだ。何でか分かる?」
サトシは、息がすえないので、マサトを見ながら首を横に振った。
「サトシがお姉ちゃんを抱き上げたからだよ」
(じゃあどうしろって言うんだ)
サトシは今、そう叫びたい気持だった。しかし、息がすえないので死にかけている。
「立たせるとかいろいろあったのに、どうしてなのかなぁサトシ」
(他に思いつかなかったんだよ)
そう言いたかった。けど、死にかけている。
(耐えろサトシ、これも恋の試練だ)
とかタケシは思っていた。

 
3.ハルカの悩み

サトシ達がそんな事をしてる時、ハルカは考えていた。
水も汲んだし、戻らなければいけない。だけどハルカは戻らない。
サトシの事を思い出すと、なんだか自分でも分からないが、新しい感情が生まれていた。
「・・・・・・」
「チャモ〜?」
アチャモが自分の顔を覗き込む。
「ねえアチャモ、私、どうしちゃったのかな」
「チャモ〜?」
アチャモに言っても分からないのは分かってても、ついつい聞いてしまう。
「なんだか苦しいの。サトシの事思い出すだけで、胸が苦しくなっちゃうの」
「アチャ、チャモチャモチャ〜」
「励ましてくれるの?アチャモ」
「チャモチャ〜」
「フフ、ありがと」
アチャモが励ましている。
それはとても嬉しい事、けど、この気持は消えなかった。
(一体何なの、この気持)
そんな様子をオオスバメは、まるでわが子を見つめるような顔で見ていた。
しかし、次の瞬間、その顔が一変して、とても真剣な顔に変わった。
『できるだけばれない様にハルカを守ってくれ』
自分の主人であるサトシの声がよみがえる。
しかし、今ハルカをここから移動させれば、争いは避けれれる。
けど、道に迷うかもしれない。
スピアーと戦うしかない。そう判断したオオスバメは静かに飛んだ。
彼女を狙っている。あいつ等の所へと、
オオスバメが向かった先にはスピアーがいた。さっき、サトシ達を追いかけ回した奴等だ。
オオスバメは静かに、自分の翼に力を込めた。
そして、スピアーの中に突っ込んでいった。
ドカッ、ズバッ、ドゴッ
その音に、彼女が反応した。
「アチャモ、向こうで音がするわ、行ってみましょう」
「チャモ」

 
4.オオスバメVSスピアー軍団

「な、何これ・・・」
「チャモ〜」
驚いたのも無理はない。おそらく、百匹はいるだろうスピアーが、次々と倒されている。
たった1匹のオオスバメに、
「スバー」
「あれ、サトシのオオスバメよね」
「アチャ、チャモチャ」
アチャモが、そうだよと言いいたげな声で言った。
「何でスピアーと戦ってるのかしら」
「アチャッ」
アチャモが小さく叫んだ。後ろを見ると一匹のスピアーが、ハルカがいた方へ飛んでいくのが見えた。
「私を、狙ってたの?じゃあ、今オオスバメが戦っているのは、私の為?」
もし、オオスバメがいなかったら、そう考えただけでも、いや、想像すら出来ない。
「スバー」
「アチャッ!」
「オオスバメ!」
オオスバメは、さすがに疲れがたまっていたらしく、とうとう力尽きてしまった。
そのオオスバメに、スピアーが襲い掛かる。
「いけない、助けなきゃ。アチャモ、火の粉」
「アッチャー」
アチャモの火の粉が当たり、スピアーたちが逃げていく。
「オオスバメ、大丈夫?」
「ス・・・スバ・・・」
「早く戻らなきゃ」
「アチャッ」
ハルカは、オオスバメを抱えながら走った。走ってる時にあることを考えていた。
「お、ハルカが帰ってきたぞ、ん、何持ってるんだハルカは」
「オオスバメだ」
サトシが真っ先に気付いた。しかし、マサトの攻撃のダメージが残っているので、起き上がれない。

「オオスバメ!大丈夫か!?」
「大丈夫だ、傷薬も塗ってやったから、もうすぐで元気になるよ」
「よかった、戻れ、オオスバメ」
「サトシどうしたの?」
「ああ、実は・・・」
事情を話そうとしたタケシを、サトシが止めた。
「サトシ?」
「何でもないよ、ただちょっと、摘み食いしたら、腹が痛くなって」
「・・・・・・」
「そうなの?」
「え、あ、ああ」
サトシの言葉に、ついタケシもあわせる。
「本当、サトシって馬鹿ね」
「ああ、馬鹿さ、ハルカ、俺をぶってくれ」
「え?何で」
「オオスバメが怪我したのは俺のせいだ、だから思いっきりぶってくれ」
「・・・出来ないよ」
「へ?」
「そんな事出来ないよ、サトシをぶつなんて、私には出来ない」
「何でだよ」
「だって私は・・・」

 
5.ぶてない理由

「私は、何度もサトシに助けられてるもの、そんな事出来ないよ」
「けど、今回俺は・・・」
「例えどんな状況でも、私はサトシをぶてないよ」
「ハルカ・・・」
「誰がなんと言おうと、私はサトシをぶてないよ、だから」
ハルカはその場に座り込み、顔を手で覆いながら、泣きそうな声で続けた。
「お願いだから、そんな事言わないで、サトシ」
「ああ、ゴメン」
その夜、サトシは眠れなかった。周りには網があり、それにタケシが虫よけスプレーをかけたから
襲われる心配はない。サトシは、ハルカの事が気になって眠れない。
あんなハルカを見たのは初めてだ。
(何だ?胸が苦しい)
あの時のハルカを思い出すと、胸が苦しくなる。
この気持は一体何なのか、サトシは懸命に考えたが答えが出てこない。
ここで考えてても仕方ない。サトシは静かに外へと飛び出した。
「・・・サトシ?」
それを、静かに見ていたものがいた事に、彼は気付いていなかった。
サトシは星を眺めていた。いつもよりもよりいっそう空が綺麗に見えた。
サトシは、夜空を見ながらある人物の事を思い出していた。
(あいつ、今頃何してんだろう)
小さい頃からよく遊んだり、喧嘩したりしていたあいつ、自分が
追いつきたかったアイツは今、どこで何をしてるんだろう。
サトシはふと、ある物をポケットから取り出した。
取り出した物は小さな袋、そして、その中には、壊れたモンスターボール。
昔、釣りをしていたら釣れたモンスターボール。しかし、シゲルもそこにいて、
同じモンスターボールにかかっていた。
無理矢理引っ張ったので壊れてしまった。二人は、半分になったボールを、
それぞれ戒めとして持っていた。しかし、今は半分ではない。
ジョウトリーグの時に、シゲルから勝ち取った物だ。
「ヘヘッ」
なんだかその事を思い出したら嬉しくなって、つい笑っていた。
「何一人で笑ってるの?サトシ」
サトシの肩が思いっきり跳ねた。
振り向くとそこにはハルカがいた。
「なんだよ、ハルカかよ」
「私で悪かったわね」
「悪いとは言ってないさ・・・むしろ嬉しいさ」
「え?何?」
「ううん、何でもない」
「隣、いい?」
「あ、ああ」
ハルカはサトシの隣に座り、聞いた。
「ねぇ、それ何?」
「ああこれ?俺のお守りさ」
「お守り?その壊れたモンスターボールが?」
「ああ、そうさ」
そしてサトシは、これがお守りである理由を話した。
「・・・と言う訳さ」
「へ〜、そんな事があったんだ〜」
「他にもいろいろあったぜ」
「どんな事があったの?」
「例えばこんな事があってさ」
「え〜、そんな事があったの?」
「ああ、他にもこんな事とかさ〜」
「サトシってよく落とし穴にはまるわよね」
「気にしてんだからあんまり言わないで」
「ふふ、ゴメーン」
そんなこんなで会話が弾んでいる時、茂みの中に、
人影があることに気付いていなかった。

 
6.夜襲

「何でジャリボーイとジャリガールが起きてるのよ」
「せっかく夜襲をかけてピカチュウを奪おうと考えたのにね」
「全くの無駄足になったのニャ」
ロケット団だった。どうやら、サトシ達が寝てる隙に、ピカチュウを奪おうと
考えていたらしい。
「それにしてもあの二人、なんだかラブラブだな」
「第一、ニャンでこんな真夜中に二人っきりで話してるのニャ?」
「あ、それ俺も思った」
「今はそんな事より、どうやってジャリボーイに見つからないように
ピカチュウを奪うか考えるのが先でしょ」
「そうだよな〜、メカを作るにしても、予算も時間も無いもんな」
「おミャーら、ちょっと静かにするニャ」
ニャースが、いつになく真剣に言った。
「どうしたんだ?ニャース」
「音がするニャ」
「音?何の」
「これは、まずいニャ、スピアーの羽の音ニャ」
『ええ!』
思わず二人は声を張り上げてしまった。
「何だ?今変な声が聞こえたぞ」
サトシの言葉にロケット団が反応する。正式には、
「何だ?」と言う言葉にだが、
「何だかんだと聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く」
「ラブリーチャーミーな敵役」
「ムサシ」
「コジロウ」
「銀河を駆けるロケット団の二人には」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」
「ニャーンてニャ」
「ソーナンス」
『ロケット団』
「またピカチュウを狙ってきたのか」
「そうだったけど、今はそんな事してる暇は無い」
「?どうゆう事だ」
「説明してる暇は無い、早くしないと奴らが」
その瞬間、ロケット団の後ろに、大量のスピアーが現れた。
「で、出た〜」
「うわぁぁぁ」
「きゃぁぁぁ」
こうして、4人と一匹は追いかけられるはめになった。
「お前ら、スピアーたちに何したんだ」
『何もしてない』
「嘘つかないで、じゃあ何で追いかけられてるのよ」
そういって後ろを見たハルカは、ある事に気がついた。
一番先頭を飛んでいるスピアーの羽が、少し焦げている。
「まさか・・・」
そのまさかだ、スピアーは、ロケット団ではなく、自分達を追ってきているのだ。
「どうしたんだ?ハルカ」
「あちゃ〜」
ハルカはそういって続けた。
「あのスピアーたち、私達を追っかけてるみたい」
「ヘ?何で」
「昼間にオオスバメがスピアーと戦ったじゃない、その復讐よ、きっと」
そんな事を話している間に、4人と一匹は崖に追い詰められていた。
「が、崖だ」
「どうするの?サトシ」
「どうするったって、ポケモン達は寝てるし」
「き、来た」
コジロウがおびえた声で言った。
「こうなったら・・・」

 
7.サトシの決断、気持の正体

「ハルカ、飛び降りるぞ」
「ええ!ちょっと待って、いくらなんでもそれは・・・」
「じゃあ聞くぞ、このままあいつらに串刺しにされるか、落ちるか
どっちがいい?」
ハルカは崖の下を見た。川がある。流れはそんなに速くないが、
下手をしたらあの世行きだ。
スピアーを見ると、助かる見込みはなさそうに見える。
「・・・分かったわ、飛び降りる、けど、ちょっと怖いかも」
「なら下を見なければいい」
「どうやって」
「目、瞑れ」
「え?」
「いいから早く」
ハルカは、言われたとおりに目を閉じた。
「それで、どうするの?」
「俺を信じろ」
そう言ってサトシは、ハルカを抱きしめた。
「ちょ、ちょっと」
ハルカも、何をされてるのか分かり、慌てる。
「行くぞ、しっかり捕まってろ」
そう言ってサトシは、ハルカの顔を自分の手で覆い、飛び降りた。
「ジャリボーイ達、行っちゃったぞ」
「ニャーたちはどうするニャ?」
「決まってんでしょ、飛び降りるの」
「けど、この高さだぞ」
「生きて帰れる保証が無いニャ」
「大丈夫よ、私達、タフじゃない。今まで何回飛ばされたと思ってんの?」
「・・・それもそうだな」
「ニャーたちは絶対助かるニャ」
「それじゃあ、行くわよ」
「おう」
『とりゃああああああ』
一方サトシとハルカは凄い勢いで落ちていた。
(とは言ったものの、やっぱり怖え〜、けど、ハルカだけは無事に降ろしてみせる)
ハルカはこの時サトシに対する気持が何なのか理解した。
(そっか、そうだったんだ、だから、私)
そしてハルカは、サトシにギリギリ聞こえるくらいの声で、ある事を呟いた。
「え?」
サトシに聞こえたらしく、間の抜けた声を出すサトシ、
「本気で言ってる?」
サトシが聞き返す。
「嘘ならこんな事言わないわよ」
「・・・ありがとう」
(ハルカが俺を必要としてくれている。なら、俺はまだ死ねないな)
サトシは、よりいっそう強くハルカを抱き寄せた。絶対に離さないように、
「ハルカ」
「何?」
「俺、今ほど旅に出てよかったって思った事ないよ」
「どうして?」
「だってさ、旅に出なかったらハルカに会えなかっただろ」
「そういえばそうねえ、けど、今はこの状況をどうするか考えたほうが・・・」

ドボーン

話してる間に、川に落ちた。サトシは、ハルカの手をとり、泳ぎ始めた。
『私、これからもずっと、サトシと一緒にいたいな』
ハルカの言葉が蘇る。しかしサトシは、この言葉の本当の意味に気付いていなかった。

 
8.言葉の意味に・・・

「ゲホゲホ・・・ハルカ、大丈夫か?」
「うん」
サトシが心配してくれる。それだけでハルカは元気になる。
気がつくと、もう日は昇っていた。
「それよりどうするの?これから」
「そうだなぁ。とりあえず、あそこの洞穴に行こう」
そう言ってサトシが指さした先には、誰かが作ったと思われる洞穴があった。
「そうね、そうしましょう」
一方、タケシ達は、
「お姉ちゃーん」
「サトシー」
「ピカピーカー」
「お姉ちゃんとサトシ、どこ行ったんだろう」
「ピカピカ」
マサトの言葉にピカチュウが答える。
「おいマサト、これを見てくれ」
「何かあったの?」
そう言ってマサトはタケシに近寄る。
「この靴跡、ハルカのだよな」
「ホントだ」
分かりにくかったが、間違いなくハルカの靴跡だった。
「じゃあこれがサトシか」
「この靴跡は誰のだろう」
「ニャースの足跡があるからロケット団だろう」
「じゃあこれをたどれば」
「ああ、二人が見つかる」
「そうと分かったら善は急げ。行こう、タケシ」
「お、おいマサト」
しかし、足跡を辿っても、そこには崖しかなかった。
「ね、ねえタケシ」
「な、何だ?」
「これってもしかしてさ」
「多分、落ちたな」
「僕達、どうしよう」
「待っとくか、町へ行ってジュンサーさんに頼むか、だな」
その頃のサトシ達、
「けど何でこんな所に洞穴があるんだ?」
「そんな事私に聞かれても」
「ヘックシ」
「クシュン」
「と、とりあえず火をおこそうぜ。寒すぎる」
「そ、そうね」
「俺、薪探してくる」
そう言ってサトシは、洞穴を出て行った。
「・・・なんだか不安かも」
とりあえず不安なので、アチャモとアゲハントを出した。
「そうだ、いい事思いついちゃったかも」
アゲハントに、タケシたちの所へ行ってもらい、自分達の居場所を教えたら
いいのでは?
「でも、とりあえずサトシが戻ってくるまで待っとこう」
そしてハルカは、ある事を思い出した。
(そう言えばサトシって、凄く鈍感なのよね〜)
もしかしたらサトシは、ただの旅仲間として一緒にいたいという風に感じてるのでは、
そうじゃないと自分に言い聞かせるが、サトシの事だ、そうとってる可能性の方が断然
高い。
(帰ってきたら聞いてみよう)

 
9.自分達ができる事を・・・

「マサト、どうする?」
「・・・町に行こう」
「一応荷物は、盗られたくないもの以外は置いていくぞ」
「・・・うん」
そして二人は町へと向かった。
「おまたせ、取ってきたぜ」
サトシはそう言って戻ってきた。
「あ、サトシ」
「?何でポケモン達を出してるんだ?」
「ねぇねぇサトシ、私いい事思いついちゃったかも」
「どんな?」
「アゲハントにタケシたちの所に行ってもらって、私達が何処にいるか
伝えてもらうの」
「その方法は俺も思いついたが駄目だ」
「え?何で?」
「崖の上にスピアーがいたんだ」
「でもアゲハントは・・・」
「大丈夫だって言い切れる保証がどこにある?」
「・・・・・・」
ハルカは黙ってしまった。
「タケシならきっと、ジュンサーさんを連れて戻ってくるさ。だから俺達は俺達のできることをしよう」
その時、外で何かが水の中に落ちる音がした。
「何?今の音」
「行ってみよう」
二人は外に出た。するとそこにはずぶぬれのロケット団がいた。
「ロケット団!」
『あ、ジャリボーイにジャリガール』
「どうして今頃になって貴方達が落ちてくるの?」
『いやあ、それが・・・』
〜回想〜
『とりゃあああああ』
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ
「とはいっても、やっぱり怖いわね」
「お、あそこに枝があるぞ」
「あれに捕まるニャ」
ガシッ
「フゥ〜、何とか捕まれたわねぇ」
「けど、これからどうするんだ」
「決まってんでしょ、スピアーがいなくなるのを待って」
「そうか、スピアーがいなくなってから上に上るんだな」
「それなら安全ニャ」
「けど、どうやってそれを確かめるんだ?」
「げ」
「まさかムサシ」
「そこまで考えてなかったのニャ?」
「ニャ、ニャースの耳で何とかならない?」
「こんな状態じゃ無理ニャ」
「じゃあどうすんのよ」
「ムサシ、そんなに大きな声出すと・・・」
バキッ
ムサシが大きな声で騒いだので、枝が折れてしまった。
『わああああ、うっそだ〜』
「ソ〜ナンス」
〜回想終了〜
「・・・とゆうわけ」
「つまり、ムサシが騒いだせいで落ちたんだな?」
「まあ、そうゆう事です」
「とりあえず、ヘックシ!」
「クシュン」 
「中で温まろう。服も乾かさないといけないし」
「そ、そうね」
「でも、このまま着てたら風引くしな、ん?」
サトシは、洞窟の中に毛布があるのに気がついた。
(何でこんな所に)
使っちゃいけないかも知れないが、ハルカが風邪を引くのも嫌なので、
「ハルカ、とりあえず俺達、何か探してくるからその間に服、脱いで乾かしとけよ
そこに毛布あるみたいだし」
「う、うん、分かった」
「じゃあ行くか、コジロウ、ニャース」
「え?」
「ニャーたちも行くのかニャ」
「俺達がいたらハルカが服脱げないだろ、
その、女の子なんだから」
サトシは、顔を赤くして言った。
「・・・そう言えば」
「そうだニャ」
「じゃあ、手分けして食料探そうぜ」
『オー』
そう言って、サトシ達は走っていった。
「ねえ、ジャリガール」
「何?」
「なんかさぁ、ジャリボーイって心強くな〜い」
「サトシはいつだって心強いわよ、何でか知らないけど
サトシといると安心するのよね〜」
「はは〜ん、さてはあんた」
「な、何よ、」
「ジャリボーイの事好きでしょ」
「な、何で、分かったの?」
「私だって一人の女よ、それ位分かるわよ」
「・・・サトシには、言わないでね」
「何で?」
「自分で、伝えたいから」

 
10.困った時は・・・

「お、こんな所に木の実がある」
「けどさ、食べられるのか、これ」
「ニャーたち、前においしそうだと思って食べた実が
とても辛かったからニャー」
「じゃあ、ポケモン図鑑でしらべて見よう」
ポケモン図鑑で調べてみたら、安全だと分かった。
「この実は大丈夫みたいだな」
「ポケモン図鑑って便利だな〜」
そして、ある程度木の実を取って戻って行った。
「これだけあれば、お前らがいても大丈夫だ」
「む、何だよ、その言い方」
「だってお前ら、予算があんまりないから借金してんだろ」
『ウッ』
「それにお前ら、木の実を取ってるとき、今すぐ食いたそうな顔してたから」
『ウウッ』
できるだけばれないように隠していたのに、ばれていた。
「まぁでも困った時はお互い様だから、こんな時ぐらい仲良くしようぜ」
そう言ってサトシは、コジロウとニャースを見て笑った。
「ジャリボーイ」
「おミャーはなんて優しいのニャ、ムサシとは大違いニャ」
「さ、ハルカたちもお腹すかしてるだろうし、早く戻ろうぜ」

「お帰り、サトシ」
「遅かったじゃないジャリボーイ」
「悪い悪い、けど遅れた分、結構木の実取ってきたぜ」
「ちゃんと食べられるんでしょうね」
「大丈夫さ、全部一回コジロウとニャースが味見してるから」
「じゃあ早く食べましょ、私お腹すいちゃった」
「あ、ああ」
「?どうしたの?サトシ」
「い、いや、なんでもない」
ハルカの笑顔を見ると、何故か顔が赤くなるサトシ
(まただ、あの時と似たような気持、一体何なんだ?)
(なるほどね〜、だからあの時ジャリボーイは)
そんなサトシを見たムサシがなにやら怪しげな笑顔を見せた。
グゥゥゥゥゥゥゥ
その時、コジロウとニャースの腹の虫が鳴った。
「なあ、早く食おうぜ。もう腹ペコで限界だよ」
「そうだな、じゃあ食うか」
そして、木の実が全員の腹の中に納まった時、
ムサシがサトシを呼んだ。

 
11.ハルカがいなくなったら・・・

「ジャリボーイ、ちょっといいかしら?」
「なんだよ」
「ちょっとついてきて」
なんとなく行きたくなかったが、ムサシを怒らせたら怖いのはサトシも知っていたので
しぶしぶついていく。
「なんだよ一体」
「質問に答えて頂戴」
「質問?」
「まず1つ目、ジャリガールの事をどう思ってる?」
「・・・分からない、今は旅の仲間以上の存在としか言えない」
「じゃあ2つ目、ジャリガールが突然いなくなったらどうする?」
「大切な仲間だ、探すに決まってんだろ」
「最後の質問、あんた、ジャリガールとの旅、やめられる?」
「出来るわけ・・・ないだろ」
「何で?」
「今ハルカがいなくなったらもう、俺は立ち直れない。
タケシやカスミの時と違うんだよ。自分でもよく分かってないけど」
「とりあえず、あんたに聞きたかった事はこれで全部、
だから戻っていいわよ」
サトシが戻ってから、ずっと空を見ていた。そして一言
「ジャリボーイ、鈍すぎ」
そう呟いた。
「あ、お帰りサトシ」
「ああ」
「ムサシ、サトシに何のようだったの?」
「ああ、大した事じゃなかった」
「そう」
「あれ?コジロウとニャースは?」
「恩返しとか言って木の実取りに行った」
「おいおい、やばい実取ってきたらどーすんだよ」
「大丈夫、サトシのポケモン図鑑持ってったから」
「俺、貸すなんて一言も言ってねーぞ」
「細かい事は気にしない気にしない」
「・・・まぁいいか」
ハルカの笑顔を見ると、サトシはすぐに折れる事を、ハルカは知っていた。
「・・・ねえサトシ」
「ん?何?」
「あの時の言葉、サトシはどうゆう風にとらえてる?」
「ああ、あの時の、一緒に旅したいって意味だろ?」
ハルカはため息をついた。予想どうりの答えだが、悲しくなってくる。
「何だよ、違うのか?」
「違うわよ、ちょっとだけ惜しかったけど」
「じゃあどういう意味なんだよ」
「こういう意味よ」
そう言ってハルカは、サトシの頬にキスをした。
「え?・・・え?・・・ええ〜!?」
「これで意味、分かった?」
「い、今の、キス?」
サトシは顔を赤くして混乱していた。
そんな光景を、影で見ていた奴がいた。

 
12.サトシになら・・・

コ「ジャリボーイとジャリガール、なんかいい感じになってないか?」
ニ「中に入り辛いニャ」
コ「あれ、ムサシがいないぞ」
ニ「ニャーが探してくるニャ」
コ「あ、おいニャース、逃げるな」
しかし、ニャースはそそくさと行ってしまった。
コ「俺はどうすりゃいいんだ?」
コジロウは困っていた。このままここにいて、
二人のあの空気が消えてから入るか、関係なしに入るか、
そんな事を考えてる間にも、二人の会話は進んでいた。
ハ「キスよ、他に何があるって言うのよ」
サ「いや、そんなにハッキリ言わなくても・・・」
ハ「とにかく、意味分かった?」
サ「ん〜、こうゆう意味か?」
そういってサトシは、ハルカの耳元である事を囁いた。
ハ「え?」
サ「言っとくけど、聞きなおすのはなしな。恥ずかしいから」
ハ「うん、分かった」
サ「で、結局はこれで合ってるのか?」
ハ「半分、かな?」
サ「それにしてもコジロウ達遅いな〜」
ハ「そう言えばムサシもまだ戻ってないわね〜」
二人は今自分達が二人きりだと言う事に再び気付いた。
しかもハルカは今、服を着ていない。乾いてはいるが、サトシがいるので
着替えられないのだ。
ハルカの髪が濡れているせいか、今のハルカがとても色っぽく
サトシには見えた。
サ(て、何考えてんだ俺は)
サトシは、自分の頭をポコポコ叩き始めた。
ハ「どうしたの?サトシ」
その様子を見ていたハルカが、心配そうに近づいて来た。
サ(う、可愛い)
ついサトシはそう心の中で呟いた。もう少し顔が近かったら、声に出ていただろう。
サ「な、何でもないよ。それより、外見張っててやるから、服、着ろよ」
とりあえず落ち着こうと、ハルカに背中を向けて水を飲み始めた。
ハ「ねえサトシ」
サ「何だ?」
ハ「私、サトシになら、裸、見られてもいいよ、なんちゃって」
サ「!ブ〜〜〜〜」
あまりの爆弾発言に、サトシは噴出して焦った。
サ「さ、流石に、それは、ちょっと・・・」
ハ「冗談よ」
サ「へ?」
ハ「そんなに真に受けないでよ」
サ「仕方ないだろ、あんな事言った後なんだから」
ハ「それもそうね」
サ「じゃ、じゃあ俺、入り口にいるから」
そう言ってサトシは、帽子を深く被りながら入り口へと走っていった。
その姿を見てから、ハルカは着替え始めた。
そして、サトシを見ながら、
ハ「ちょっとだけ、本気だったのにな」
そう呟いた。
ハ「でも、サトシがあんなこと言うなんて以外かも」
服を着てからハルカはまた、呟いた。

 
13.ハルカの可愛い顔を見ると・・・

サ「コジロウ、お前、いつからここに?」
コ「結構前から」
サ「さっきの話、どこから聞いてた?」
コ「ジャリボーイが噴出したとこから」
サトシは、ハルカに聞こえないくらいの声で話していた。
サ「こりゃまた大量だな、昼の倍はあるじゃん」
コ「いや〜、探せば見つかるもんだな〜、食料って」
サ「あれ?ニャースは?」
コ「ムサシを探しに行った」
サ「あっそう言えば、ムサシまだあそこにいるのかな?」
ハ「サトシ〜、もう入ってきていいわよ〜」
サ「分かった、ま、その内戻ってくるだろ」
コ「そうだな」
ハ「あ、コジロウ、戻ってきたんだ。あれ?ニャースは?」
サ「ムサシを探しに行ったんだってさ」
ハ「ふーん。あ、コジロウ」
コ「何だ?」
ハ「サトシにポケモン図鑑、返してあげて」
コ「ああ、そうだったな、ほらよ。悪かったな、勝手に借りて」
サ「ああ、その事はいいよ」
コ「それにしてもムサシとニャース遅いな〜」
サ「一体何やってんだか」
その頃のムサシ、
ム「ぐが〜」
ニ「ニャーはどうすれば」
起こそうかな、そんな事を考えていたが、ムサシは寝起きが悪いのだ。
起こせば自分の身が危ないと悟り、距離を取ってムサシが起きるのを待っていた。
サ「いくらなんでも遅すぎないか?」
コ「もしかしたらムサシ、寝てるかもな」
サ「寝てたらニャースが起こすだろ?」
コ「いや、実はムサシ、寝起きが凄く悪いんだ」
サ「性格からして予想は出来るけど・・・」
コ「俺もニャースもそれはよく分かってるからな。だから起きるまで待ってるんだと思う」
サ「でも風邪引かないか?」
コ「じゃあ俺が探してきて連れてくるよ」
サ「お、おいコジロウ」
サトシはとっさに呼び止めたが、コジロウはそのまま走っていった。
サ(また二人っきりかよ)
さっきの事もあるし、サトシはオロオロしていた。
ハルカも同じ事を考えていたのか、顔を赤くして俯いている。
サ「お、俺、水汲んでくる」
サトシはそう言って洞穴を出ようとしたが、ハルカが自分の腕をつかんでいた。
サ「何だ?どうしたハルカ」
ハ「私も行く」
サトシは困った。ハルカといるとドキドキするので、とりあえず気持を落ち着かせる為に
水を汲みに行こうと思ったのだが、これでは意味が無い。
ハ「ダメ?」
サ(うっ)
ハルカはサトシに、困ったような顔をして聞いた。
サ(やっぱり、可愛い)
そんなハルカの可愛い顔を見ると、サトシはやっぱりすぐに折れる。
サ「いいよ」
ハ「本当?」
ハルカの顔がパアッと明るくなる。二人きりの時にこんな笑顔を見たことが無かったので、
サトシは余計に焦った。
サ「そ、それより、早く汲みに行こうぜ。コジロウが戻ってくる前に戻っておきたいからさ」
ハ「うん」

 
14.生まれて始めて・・・

サトシはずっとドキドキしていた。ハルカが隣にいるのにはなれたのだが、
ハルカが、自分の腕に抱きついている様な状態なのだ。しかも、
そのせいで、ハルカの胸が自分の腕に当たっているのだ。
サ(ハルカって、10歳なのにカスミより・・・て何考えてんだ俺は)
サトシは、水を汲んだばかりのペットボトルで、自分の頭を叩いた。
ハ「さっきからサトシどうしたの?」
ハルカが心配そう顔をして、自分の顔を覗き込んできた。
サトシはまた、ドキッとした。
サ「な、なんでもないよ」
ハ「本当に?」
サ「なんでもないって」
サ(ハルカって、本当にカスミとは違うなぁ)
サトシは、生まれて初めて女の子と一緒に歩いた気がした。
カスミと二人きりで歩いていた時もあったが、ハッキリ言って、
カスミを女の子と認識するのは、サトシには出来なかった。
虫が嫌いという。女の子らしい一面もあったが・・・
サ(そういえば、ハルカも虫を見て驚いた時、あったよな〜)
あれはいつだったか、ハルカの目の前にケムッソが出てきた時、
ハルカも、女の子らしい反応を、してた気がする。
サ(そういえば、あの時にはとっくにハルカの事を意識してた気もするな〜)
サトシは気付いた。今自分は、生まれて初めて、女の子と言うものを
意識している。
サ(そういえば俺、今までポケモンの事しか考えてなかったな)
自分が鈍感だと言われるのも、それが原因なのでは?そんな事を考えていると、
いつの間にか、洞穴の中にいた。
サ「ハ、ハルカ」
ハ「何?」
サ「そ、そろそろ、手、離してくれないか」
ハ「あ、ごめん」
ハルカは慌てて手を離した。しかし、ハルカが掴んでいた感触、
ハルカの胸の感触、まだハッキリと残っていた。
サトシは、なんだか恥ずかしくなって、下を向いていた。
ハ「あ、コジロウ達が帰ってきた」
ハルカが囁いた。振り向くとそこにはムサシとニャースと、そして・・・
サ「うっわ、どうしたんだコジロウ、その顔」
コ「いや、ムサシを背負って戻ろうとしたら、突然ムサシがセクハラと叫んで」
サ、ハ『それで?』
サトシとハルカは同時に言った。言ってから二人は顔を赤くした。
コ「髪の毛でボコボコにされてこの通り」
サ「ま、まぁ、とりあえずみんな揃ったし、木の実食おうぜ、俺腹減ったよ」

 
15.夜空を見ていると・・・

サ「ふぅ〜、もう食えねぇ」
コ「しかし、これだけ食ってもまだ残ってるとは」
ニ「ちょっと取り過ぎたのニャ」
サ「みんな、腹も膨れた所で悪いんだが一つ、問題が」
ハ、ム、コ、ニ『何?』
サ「みんなどこで寝るんだ?」
コ「それより毛布は誰が使うんだ?二人使えそうだが」
コジロウの一言で、くだらない言い争いが始まった。
ニ「ここわやっぱりニャーが使うニャ」
ム「あんたねえ、レディーファーストって言葉知らないの?」
サ「じゃあ一人目はハルカだろ」
ハ「でもあたし、ニャースとコジロウと一緒は嫌だよ」
サ「じゃあムサシでいいんじゃないか?」
ム「面倒くさいわね、ジャンケンで決めるわよ」
コ「よっしゃ、望むところだ」
ハ「言っとくけど、コジロウかニャースだったら降りるからね」
サ、ハ、ム、コ、ニ『最初はグー、ジャンケン・・・』

サ「で、結局こうなるのね」
ハ「あー、やっぱり毛布ってあったかいかも」
結局、ジャンケンに勝ってしまったサトシとハルカは、ロケット団の羨ましそうな目が耐えられなくて、外で寝ることにした。
サ「寒かったら言えよ、上着貸してやるから」
ハ「うん、けど大丈夫だよ」
サ「そっか、それにしても、空が綺麗だな」
ハ「ホントだね」
サ「俺さ、子供の頃、よく夜空を見てたんだ」
ハ「え?なんで?」
サ「なんかさ、落ち着くんだ」
ハ「どんな風に?」
サ「例えばさ、誰かとけんかした時とかさ、夜空を見ると、どうでもよくなるんだよな。なんであんな事でけんかしたんだろうってな」
ハ「・・・・・・」
サ「ん?どうした?」
ハ「なんか、サトシが大人になった気がするかも」
ハルカが言ったのも無理はない。話しているサトシは、凄く大人びていた。
ハ「でも、そんなサトシも・・・」
サ「そんな俺もなんだよ」
ハ「ううん、なんでもない」
何だよそれと言いたかったが、ハルカの取った行動に言葉が出てこなかった。
サ「ハ、ハルカ!?」
ハ「スー」
サ「寝ちゃってるし」
ハルカは、サトシに寄り添う形で眠っていた。
サ「どうすんだよ、これじゃあ俺が寝れないじゃん」

 
16.姉思いの・・・

サ(タケシ達、どうしてるかな〜)
眠れないのでとりあえず起きていたら、そんな事が頭の中に浮かんだ。
サ(そういえばマサト、あれ位で怒ったって事は、この光景見たら、
絶対、怒るな)
そう考えると寒気がした。
サ「またあれ、食らわないといけないのか」
ハ「あれって何?」
サ「!?ハルカ、起きてたのか」
ハ「うん、それより、あれって何なの?」
声に出したつもりはなかったのだが、声に出ていたらしい。
サ「あ、いや、なんでもな・・・」
なんでもない。そう言おうとしたのだが、ハルカの目を見ると、言えなかった。
ハ「お願いサトシ、教えて、何でか分からないけど、私のせいでサトシが嫌な目にあってるような
気がするから」
ハルカの目は、今にも泣き出しそうだった。サトシは、そんなハルカを見て、胸が痛くなった。
サ(こんなハルカ、見たくない)
真実を隠す事より、その気持のほうが大きかった。
サ「分かったよ、話すよ」

ハ「それ、本当なの?」
サトシは、ハルカが水を汲みに行ってる間に起こった事を、隠さずすべて話した。
サ「ああ、摘み食いってのは嘘だったんだ。言ったらお前、マサトを怒ってたろ」
ハ「・・・うん」
サ「それが嫌だったんだよ。方法はどうあれ、マサトは、お前の為にやったことだから」
ハ「けど、私の気持も知らないくせに」
サ「いーじゃねーか、姉思いのいい弟だと思うぜ、俺は」
ハ「そっか、そうだよね」
なぜだろう。サトシが言うと、もうどうでもよくなっちゃうな。
サ「さ、もう遅いから寝ようぜ」
ハ「うん、そうだね」
そして、二人は寄り添いあって眠った。
そしてハルカは心の中で、
ハ(サトシ、ホウエン地方から出ても。ううん、ずっとずっといつまでも、
私を隣にいさせてね。大好きだよ。サトシ)
聞こえないのは分かってる。けど、伝わると信じて

 
17.恥ずかしかった理由

朝、サトシが先に起きた。
サ「ん、朝か、ハルカ?」
ハルカは何故か、サトシに抱きついていた。
サ「何でこんな事に・・・」
鈍感なサトシでも、この状況が凄い事だと言うことは理解できた。
サ「ハルカ、おいハルカ」
ハ「ん、もう朝・・・」
二人は固まってしまった。何故なら、二人の顔が、すぐ近くにあったからだ。
サ「と、とりあえずハルカ、手を離してくれないか?」
ハ「あ、ご、ごめん」
二人は顔を真っ赤にしてそのまま固まった。
そんな二人の心の声、
サ(何だろう、この気持。もしかして俺、もう少しあのままでいたかったのかな)
ハ(サトシに抱きついてた、なんでだろう、無意識の内にかな、それとも・・・)
コ「お、ジャリボーイにジャリガール、どうしたんだ?二人とも顔が真っ赤だぞ」
サ、ハ『そ、そう?』
コ「とりあえず、朝の分食っとけよ、後はお前達の分だけだぞ」
サ、ハ『わ、分かった』
何故か声が揃ってしまう二人は恥ずかしくなって、そそくさと中に入っていった。
その時サトシは、ある重大な事に気付いた。
サ(そ、そう言えばこの毛布・・・・・・)
そう考えるともの凄く恥ずかしくなって、サトシは毛布の中から出た。
ハ「?どうしたの?サトシ」
サ「いや、ちょっと恥ずかしくなって」
ハ「一緒に毛布の中に入ってるから?」
サ「それもある」
ハ「???」
それもあるって事は、他にも何か理由があるのかなぁ。
ム「あ!」
話を聞いていたムサシが突然、声を張り上げた。
サ「何だ?どうしたんだ?」
ム「ジャリボーイ、あんたも男ね〜」
サ「どう言う意味だよ」
ム「つまり(ゴニョゴニョ)こう言う意味よ」
サ「ま、まぁ、あってはいるけどさ〜」
ハ「何々?何の話?」
ム「つまり」
サ「だぁ〜、その話は俺がいるときにはしないでくれ、恥ずかしいから」
ム「じゃあジャリボーイ、お昼何か取ってきて」
サ「分かったよ。行こうぜ、コジロウ、ニャース」
コ「何で俺たちも」
ニ「行かなきゃならないのニャ?」
サ「お前らには聞かれたくないんだよ」
コ、ニ『ま、いっか』
そう言って、コジロウとニャースは木の実を取りに行った。
サ「ハルカ、何取ってきて欲しい?」
ハ「う〜ん、じゃあ、モモンの実」
サ「分かった、じゃあ、多分、10分位で戻ってくるから」
そう言ってサトシは、走っていった。
ハ「でムサシ、さっきの話、何なの?」
ム「ああ、それは・・・」

 
18.私の為に・・・

ム「その毛布、昨日まで何に使ってた?」
ハ「え〜っと、服を乾かすために、私が直接肌着してた」
ム「理由はそれよ」
ハ「え?どう言う事?」
ム「つまり、昨日あんたがそれを肌着してたのを思い出して恥ずかしくなったのよ」
ハ「あ、そう言う事だったのね。サトシ、女の裸に弱いと見た」
そんな事を話している内に、コジロウとニャースが戻ってきた。
ハ「お帰り、あれ?サトシは?」
コ「それが、モモンの実が無いからって」
ニ「別の場所を探してるのニャ」
ム「何であんた達は着いていかなかったの」
コ、ニ『それが・・・』
〜回想〜
サ「この先にありそうだな」
コ「大丈夫かジャリボーイ」
ニ「ニャー達もついていくのニャ」
サ「いや、いいよ」
コ「けど」
サ「とりあえず2人とも、この先はヤバイ、多分、お前らが行ったら死ぬ」
ニ「ひえ〜、怖いニャ」
サ「とりあえず30分して戻ってこなかったらハルカ達の所へ戻ってくれ」
コ「けどやっぱり」
サ「もしやばかったら、オオスバメをハルカ達の所に向かわせるから」
コ「・・・分かった、生きて戻って来いよ」
サ「ああ、もちろんさ」
そして、待つこと早10分
コ「遅いな〜ジャリボーイ」
ニ「きっともうすぐ戻ってくるニャ」
サ「うわあああああああ」
突然、サトシの悲鳴が聞こえた。
サ「コジロウ、ニャース、逃げろ!」
コ「どどどどど、どうする」
ニ「ととととと、とりあえずムサシとジャリガールに報告ニャ」
そう言ってコジロウとニャースは、洞穴へと走っていった。
〜回想終了〜
コ「という訳で」
ニ「戻って来たのニャ」
ハ「そこに案内して」
コ、ニ『え?』
ハ「いいから早く!サトシの命がかかってるかもしれないのよ」
そう言ったハルカの目には、うっすらと涙が溜まっていた。
そして、サトシの入っていった道が見えたとき、そこに誰かが倒れていた。
ハ「サトシ!」
ハルカは駆け出した。ロケット団が続いて走り出す。
ハ「サトシ、ひどい怪我、大丈夫?」
サ「あ・・・ハル・・・カ・・・ゴメン・・・モモンの・・・実は・・・見つから・・・なかった・・・」
ハ「サトシ、もういいよ」
そう言ってハルカは、サトシの顔を自分の胸に押し当てるように抱きしめた。
サ「ハル・・・カ・・・」
ハ「サトシ、もう喋っちゃ駄目」
サ「暖・・・かいな・・・ハルカ・・・ママを・・・思い・・・・出すな」
ハ「サトシ、喋らないで、お願い」
ハルカは、よりいっそう強く、しかし優しく、サトシを抱きしめた。
サ「何で・・・泣い・・・てんだ・・・ハルカ・・・何か・・・嫌な・・・事・・・でも・・・あったか?」
ハ「嬉しいの、サトシがここまでして、私のために頑張ってくれたのが。でも、もう喋らないで、
すぐに医者に連れて行ってあげるから」
サ「へへ・・・サン・・・キュー・・・な・・・」
そこで、サトシの意識が途絶えた。
ハ「サトシ!サトシ!」
ム「大丈夫、気を失ってるだけよ」
ハ「何でそんな事分かるの?」
ム「これでも元ナース希望者だったからね」
ハ「そ、そうなの?」
ム「そんな事より、早く病院に行かないとヤバイよ」
ハ「けど、ここから出る道もまだ」
その時、タケシとマサトが、タイミングよく二人を見つけた。
マ「お姉ちゃ〜ん」
ハ「マサト?それにタケシも」
タ「なんとか無事だったみたいだな」
ハ「・・・なんかじゃないよ」
タ、マ『へ?』
ハ「無事なんかじゃないわよ。私のせいでサトシが、サトシが」
その時タケシは、ハルカの胸の中に、サトシがいるのに気付いた。
そして、その背中から出ている、おびただしい血にも気付いた。
タ「まずい、早くしないとサトシが死んでしまう」
マ「え?それって」
その時にマサトも、サトシの置かれてる状況を理解した。
マ「大変だ、早く病院に連れて行かないと」
ジュ「その前に、止血が先です」
そう言ってジュンサーさんは、手際よく、サトシの体に包帯を巻いた。
ジュ「これで、病院までは持つはずです」
タ「さあ、早く病院にサトシを連れて行くぞ」
ハ「うん」
そう言ってハルカはサトシをおぶってタケシ達と一緒に走っていった。
ム「なんだかさ〜あたし達無視されてない?」
コ、ニ「確かに」

 
19.サトシの苦しみ

ハルカ達が病院へ向かっている時の、サトシの心の中
サ「どこだ?ここ」
そこは、何もない空間、するとそこに、あるポケモンが2匹現れた。
サ「お、お前らは、うわああああ!」
その2匹のポケモンは、サトシに襲いかかった。

サ「うわあああああ!」
ハ「サトシ、大丈夫かな」
ハルカの目に涙が溜まる。
タ「大丈夫さハルカ、サトシはこんな所で死ぬようなやわな奴じゃない」
ハ「うん、そうだね」
そうはいっても、涙が止まらない。
マ「お姉ちゃん、何があったの?」
ハ「・・・今は話したくない」
それっきりハルカは何も喋らなくなった。
ただ、サトシを見ては涙を流し、それを振り切るようにスピードを上げる。
そんな行動を繰り返していた。
その頃、サトシの心の中、
サ「ぐわあああああ!」
?「グルルルルルル」←こんな感じでしょうか、鳴き声は。
ズシャッ
サ「ぐああ!」

サ「ぐあああああ!うぐう」
突然サトシが暴れだした。と言うより、傷が痛み始めたのか、呻き、そして、
耐え切れないのか、ハルカの肩を掴んだ。
ハ「痛っ」
マ「お姉ちゃん」
サトシが余りにもきつく握り締めたので、流石に少し痛みが顔に出た。
しかし、足は止めなかった。
タ「ハルカ、交代するか?」
ハ「大丈夫、これ位、サトシの痛みに比べたら」
マ「けどお姉ちゃん、顔がもう限界だって言ってるよ」
ハ「いいから、タケシに交代したらその分、時間が無駄になるの、それに」
タ、マ『それに?』
ハ「今度は、私がサトシを助ける番なの」
そんな事を話してる内に、病院に着いていた。
ハ(もうすぐだよサトシ、もうすぐその苦しさから開放されるよ)
4人と1匹は、病院へと入っていった。
ジュ「急患です」
ハ「すいません、通してください」
ナ「急患とは本当ですか?」
ジュ「はい、何者かに背中を引き裂かれて危険な状況です」
ナ「分かりました、私についてきて下さい」
そう言うとナースは、ある、人の並んでいる場所へ向かい、
人ごみを掻き分けて一つの部屋へと入った。
ハルカたちも、続いて入る。
先「何事です?」
そこには、20代位の若い男性が座っていた。誰かを診察していたようだ。
ナ「診察中申し訳ございません。しかし、急患です」
先「状況は?」
ナ「原因不明の引っかき傷のようですが、出血がひどく、患者の命に関わります」
先「分かった、手術室に運んでおいてくれ、私もすぐに行く」
ナ「はい」
先「それと、彼の血液型を調べて、それと同じ血液も用意しておいてくれ」
ナ「分かりました、さあ、こちらです」
ナースに連れられて、手術室へと向かった。
ナ「ここで待っていて下さい」
そう言って、サトシをおぶり、ナースは手術室へと姿を消した。
それから少しして、あの若い先生もやってきた。
ハ「サトシ」
ハルカはただ、祈るしかなかった。しかし、すぐに若い先生が戻ってきた。
タ「どうしたんですか?先生」
先「・・・・・・血が足りない」

 
20.まだ、伝えたい事があるから・・・

タ「血が足りないんですか?」
先「そうだ、あと300CC足りない」
ハ「先生、私の血液型、サトシと同じか調べてもらえませんか?」
マ「お姉ちゃん?」
先「分かった、ついてきてくれ」
ハ「はい」
そして待つこと5分
先「彼女の血液型が、彼のと一致した」
タ「それじゃあ」
先「ああ、彼は助かる」
そう言って二人は、手術室へと姿を消した。
タ「あの、先生」
先「なんだい?」
タ「サトシの傷は」
先「ああ、あれはリングマだよ、確信はないがおそらく間違いない、この辺りのリングマは、モモンの実を餌にして生息しているからね、
きっとモモンの実を取ろうとして、リングマの夫婦にやられたんだろう」
タ「なんで夫婦だと分かるんですか?」
先「左右両方に、出血量からして同じ時に付けられたような傷があったからね」
マ「でも何でサトシがモモンの実を?」
ハ「私のせいよ」
突然口を開いたハルカに、みんなはハルカを見た。
ハ「私があの時、モモンの実が欲しいなんて言ったからサトシはあんな目に」
そこまで言うと、ハルカは顔を手で覆い、泣き崩れた。
先「そのサトシ君を、君は今助けに行くんだ」
先生が、ハルカの肩に、そっと手を置いた。
ハ「はい、サトシに誤らなくちゃ」
そう言ってハルカは立ち上がった。
ハ(まだサトシに伝えたい想いがあるから、死なないでね、サトシ)
心の中でそう呟き、ハルカは手術室へと入っていった。
マ「大丈夫かなぁサトシ」
タ「きっと大丈夫さ、俺達は、元気で戻ってくると信じて待とう」
マ「うん」

 
21.ママとは違う安心感

先生「これよりオペを開始します」
ハ「サトシ」
先生「君は、向こうを向いたほうがいい、オペを見るのは辞めた方がいい」
ハ「いいえ、私はサトシから目を離しません」
しかし、そう言おうとしたが、ハルカの本気の目を見て、言葉を呑んだ。
先生「分かった、彼から決して目を背けてはいけないよ」
ハ「はい」
こうして、オペが始まった。
ハッキリ言ってオペは、ハルカが見るにはまだ早すぎた。
途中、何度か目をそらしそうになったが、何とかサトシから目をそらさずにオペは終了した。
先生「ちゃんと、最後まで見守ってあげたんだね」
ハ「はい」
先生「君も少し、血を抜きすぎた。彼と同じ病室で休むといいだろう」
ハ「はい・・・あり・・・がと・・・う・・・ござ・・・い・・・ます」
そこで、ハルカの意識が一度、途絶えた。
次に目を覚ました時には、自分は病室にいて、隣のベッドには、サトシが眠っていた。
そして、その間には、タケシとマサトが、
ハ「サトシ」
最初に出てきた名前は、やっぱりサトシだった。
マ「あ、お姉ちゃん、大丈夫」
ハ「マサト、ねえ、私、どれくらい眠ってた?」
タ「丸一日だ」
ハ「そんなに?」
タ「まだ早いほうらしいぞ」
ハ「そっか」
マ「それよりお姉ちゃん、サトシが全然目を覚まさないんだよ」
ハ「?どういう事?」
タ「本当はサトシ、5時間もすれば目を覚ますはずだったんだ」
ハ「じゃあ、何でサトシは眠ったままなの?」
タ「どうやらサトシ本人の精神面で問題があるらしい」
マ「もしかしたらこのまま起きないかも知れないって」
ハ「そんなの嫌よ、だって、約束したもの」
タ、マ『約束?』
先生「君達、ちょっと来てくれないか?」
その時タイミングよく先生が来てくれたので、ハルカは約束の事を話さなくて済んだ。
タ「はい、今行きます」
マ「チェッ、聞きたかったな、約束の事」
そう言って二人は病室から出た。
タ「なんですか?」
先生「あの女の子は起きたかい?」
マ「はい、起きましたけど」
先生「じゃあ、君達は今は行かないほうがいい」
タ「ですが、サトシは」
先生「後はあの女の子が何とかしてくれるだろう。サトシという子が目を覚ましたら
来てもいいと連絡を送るのでその時まで待っておいてやってくれ」
タ「分かりました」
そう言ってタケシは、マサトと共にポケモンセンターに戻って行った。
その頃、ハルカはと言うと、
ハ「サトシ、大丈夫かなぁ」
サ「うう、くう」
ハ「サトシ、苦しそう」
サ「く、うぐう」
ハ「サトシ」
そう言ってハルカは、あの時のようにサトシを抱きしめた。
サトシの心の中
サ「な、何だこの感じ、俺はこの感じを知ってる?ママ?いや違う、この感じは、
ハルカ?・・・・・・そうか、今頃こんな事に気付くなんて、自分の事にも相当鈍いな、俺」
そして、サトシは目を閉じた。今なら分かるこの感じが何なのか、
サ「俺は、この気持を、ハルカに伝えたい」
そう思うと、体中から力が湧いてきた。
認めてもらいたい。嫌われてもいい。彼女を守るために、俺は生きる。
ハ「サトシ、大好きだよ」
ハルカがそう呟いた時、サトシが小さく呟いた。
サ「ハルカ」
ハ「サトシ、起きてたの?」
その時、ハルカは自分がまだサトシを抱きしめてる事に気付き、恥ずかしくなった。
ハ「あ、ゴ、ゴメン」
サ「ハルカ、もうちょっとだけこうさせていてくれ」
ハ「え?う、うん」
サ「ハルカ、やっぱりあったかい、ママを思い出すよ」
ハ「え?サトシ?」
サトシは、ハルカに甘えるように抱きしめ返した。
サ「けど、ハルカはママじゃない、ハルカに感じた安心感、ママとは少し、違う」
ハルカはなんだかサトシの母親の気分になった。
ハ(サトシのママさんも、こんな感じだったのかな)
サトシはいつの間にか、眠っていた。ハルカに抱きついたまま、
ハ「フフッ、サトシったら子供みたい」
そう言ってハルカは、サトシの頭を優しく撫でた。
ハ「お休み、サトシ」
そう言ってハルカも眠りに落ちた。

 
22.夢の中で、自分の気持に・・・

ナ「ハルカさ〜ん、調子はどうですか?」
そう言ってドアを開けたナースが見たものは、
ハルカに甘えるように抱きしめて眠っているサトシと、
サトシの頭に手を乗せながら、壁にもたれて眠るハルカだった。
ナ「ちょ、ちょっとハルカさん?これはどういうことですか?」
ハ「あ、どうも」
ナ「どうもじゃ無いですよ、一体このカッコは」
ハ「あ、大声出さないで下さい。サトシが起きちゃいます」
ナ「あ、スイマセン。てそうじゃなくて」
その声に、サトシが目を覚ました。
サ「ん?あ、俺寝ちゃってたのか?」
その時、ナースがいるのに気付き、妙に恥ずかしくなった。
サ「あ、ゴ、ゴメン」
サトシは慌てて手を離した。ハルカがちょっとだけ、残念そうな顔をする。
ナ「と、とりあえず、サトシ君も起きたんですね?」
サ「はい、まあ、一応」
ナ「私、サトシ君の食事も作ってきます」
そう言ってナースは、そそくさと行ってしまった。
サ「何だったんだ?」
ハ「さあ」
サ「それよりハルカ、話があるんだけど」
ハ「何?話って」
サ「俺さ、夢見てたんだ、俺を襲ったポケモンにまた襲われる夢」
ハ「そんな夢を見てたの?」
けど、これでハッキリした。なぜあんなにうなされてたのか、
なぜ、意識が戻らなかったのかが、
サ「そのポケモンたちの攻撃を受けて、もう俺は、ここで死ぬのかって思ったんだ」
ハ「そんな事が」
サ「その時に、ハルカの温もりを感じたんだ。始めはママの温もりだと思ったけど、違った。
不思議だよな、ハルカの温もりを感じただけで、生きる気力が湧いてきたんだ。
その時に気付いたんだ。自分の、本当の気持に」
ハ「本当の気持?」
サ「ああ、俺は、その、ハルカの事が、好きなんだって」
そこまで言うと、サトシは下を向いて顔を真っ赤にした。
サ「それで、その時に決めたんだ。どんなに迷惑でもいい、ハルカを守りたいって」
ハ「ありがとう、サトシ」
今度はハルカが、サトシに甘えるように抱きついた。
サ「は、ハルカ!?」
ハ「私も、サトシの事が好きだよ。だから、いつかきっと、私と結婚してね」
サ「そんな事、聞かれなくても俺から頼んでたよ、ハルカ」
ハ「サトシ」
サ「ハルカ」
二人の距離が縮まっていく、そして、二人の唇が一つになった時、
ナ「ハルカさん、サトシ君、夕食持って来た・・・」
もう二人は、離れなかった。恥ずかしい気持より、このままでいたい気持の方が大きかった。
ナ「私ってば、タイミング悪すぎ〜」
ナースはただ、そう叫ぶしかなかった。
その後、1ヶ月でサトシは退院した。
あの後、二人のラブラブ伝説?は病院中に広がり、サトシの退院なのに、ほぼ病院中の人達が
見送りに来ていた。
先生「退院、おめでとう」
サ「はい、ありがとうございます」
ハ「サートシー」
サ「グエッ」
ハ「退院おめでとう」
サ「何でそこで抱きつくんだ、あれ?タケシとマサトは?」
ハ「町の入り口で待ってるよ、ピカチュウに見張りを頼んだから大丈夫よきっと」
患者A「ヒューヒュー、相変わらずラブラブだね〜」
患者B「幸せにしてやれよ」
サ「何か、こうして見送られるの、ちょっと恥ずかしいな」
ハ「まあいいじゃない、私達の愛を祝福してくれてるのよ」
患者C「最後に、いつものあれ頼むよ〜」
サ「また?」
ハ「いいじゃない、愛の証よ」
サ「俺はそう考えられるお前が羨ましいよ」
そういいつつも、二人の距離は縮まっていた。

サ「それじゃあ、俺達はもう行きます」
ハ「お世話になりました」
先生「さよーならー、元気でなー」
患者ABC『いつまでもお幸せに〜』
サ「皆さんお元気で〜」
ハ「さよーならー」

タ「遅いぞ、二人とも」
サ、ハ『ゴメンゴメン』
サ「それじゃあ、出発しようぜ」
タ「お、サトシ、いつになく元気だな」
マ「ま、それだけが取り柄だからね〜」
サ「そうかな、わからねーぞ」
マ「何かサトシ、変」
サ「大人になったって言えよな」
タ「そんな事言ってるうちはまだまだ子供だな」
ハ「確かにまだ子供かも」
ハルカは、サトシが自分に甘えるように抱きついてきたのを
思い出し、顔を赤くしながら言った。
マ「お姉ちゃん、顔赤いよ、どうしたの?」
ハ「子供のマサトには教えてあげないよ 〜」
ハルカは、あっかんべ〜をして走っていった。
マ「なんだよそれ〜」
タ「おいちょっと待てよ」
サ「あ、俺にも教えてくれないってことか〜?」
ピ「ピカピ〜」
こうして、サトシ達の旅は、なんら変わりなく続く、サトシが、ハルカを庇う回数が増えた事意外は・・・
そして10年後、二人は幸せな日々を送っていた。

 

おまけ

マ「ねえサトシ〜」
サ「何だよマサト」
サトシは、水を飲みながら答えた。
マ「お姉ちゃんとなんかあったでしょ」
サ「ムグッ、何でそう思うんだ?」
噴出しそうなのを必死にこらえて、サトシは聞いた。
マ「だってお姉ちゃん、随分ご機嫌だもん」
サ「別に、何もなかったさ」
ハ「ねえ二人とも、何の話してるの?」
サ「いや、ハルカがご機嫌だから何かあったのか聞かれてただけだよ」
ハ「ふ〜ん、残念だけどマサトには教えてあげな〜い」
そう言ってハルカは、サトシの隣へ行き、腕に抱きついた。
サ(またかよ、まあいいけど)
ちょっとだけ恥ずかしいので、サトシは帽子を深く被った。
サ(やっぱり、カスミよりハルカの方が可愛いな)
自分の腕に抱きついて、マサトと言い争っているハルカを見て、
心の中で呟いた。
タ「よし、じゃあここらでお昼にしよう。
ハ、マ『賛成』
ランチの時、マサトは、サトシが何かを読んでいる事に気がついた。
マ「あれー、サトシ何読んでるの?」
サ「ああ、ちょっと、コンテストの技術を、ジム戦で使えないかなって思って」
ハ「サトシが本を読む所、初めて見たかも」
タ「俺も始めて見るな〜」
サ「俺だって、本くらい読むさ」
ランチ終了後、
タ「お〜いマサト、水を汲みに行くから手伝ってくれ」
マ「サトシに頼んでよ」
タ「サトシは別の事で忙しいみたいだからな」
そう言ってタケシは、サトシを見てニヤニヤしていた。
マ「分かったよ」
そう言ってマサトは、タケシと共に森の中へ歩いていった。
サ「タケシ、気付いてるな」
ハ「うん」
するとハルカはサトシにもたれかかった。
サ「ハ、ハルカ?」
ハ「サトシ、いつまでも私を、貴方の隣にいさせてね」
サ「当たり前じゃん、ハルカは俺にとって、その・・・」
ハ「サトシにとって、何?」
サ「は、初恋の相手でもあるしな」
ハ「私も、サトシが初恋の相手。それに、約束したものね」
サ「ああ、この旅が終わったら、結婚するって」
ハ「パパとママに、いっとかなきゃ」
サ「俺もいっとかないとな」
二人は、寄り添いあった状態になった。
ハ「ずっと、サトシといられる幸せ、感じられたらいいな」
サ「俺も、ハルカといられる幸せ、ずっと感じていたいさ」
その内二人は、眠くなったのか、根を瞑った。
サ、ハ『ずっとこのままいられたらいいな』
二人は、眠りに落ちた。その顔は、見るからに幸せそうだった。
タ「助かったよマサト」
マ「あれ?お姉ちゃんとサトシ、寝ちゃってるよ」
二人が戻ってきた時にはもう既に、二人は深い眠りに落ちていた。
タ「起こすのも可哀想だ、このままそっとしておこう」
マ「うん、そうだね」
これからも旅を続けるサトシの隣には必ず、ハルカがいた。
そのうち二人は、タッグバトルのコンビネーションが抜群によかったのが原因で、
二人は、「最強タッグバトラー、サトシとハルカ」という名前が付けられて、有名になった。
もちろん、そんな二人に勝負を挑んだ輩が大勢いたが、どちらも倒す事が出来ずにいた。
二人は、どんな事があっても離れる事は無かった。
二人の幸せは、いつまでも終わることなく、続いた。
二人はこの世を去るときすら、共にこの世を去っていった。
そんな二人の伝説は、いつしか、おとぎ話になり、ながきに渡って語り継がれていった。


 

とある事件からタケシたちと離れ離れになってしまった、サトシとハルカ(+α?)のお話です。
様々な出来事を二人で一緒に協力しあい、乗り越えていく。
時には男らしい、女らしい一面を見せつつ、二人がだんだん近づいていく様子がすごく出てますね。
お互いの気持ちを知ってからの変化の描写も素晴らしいです。
ここまでの長編小説、お疲れ様です。
Commentator by 冬草


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