お似合い

いつからだろう、サトシの事を意識するようになったのは。
最初は、ただなんとなく一緒に行きたかっただけ、けど
、 喜ぶ顔、悲しむ顔、落ち込む顔、そんな彼の色々な面を見ていたら、いつの間にか好きになっちゃった。
コンテストの練習すら、彼がいないとなかなか進まない。
サトシは、私の事どう思ってるのかな?
でも、嫌われてたらどうしよう。
真実を知りたいけど、なぜか怖い。他に好きな人いるのかな?
「おいハルカ?おいってば」
「え、あ、な、何?」
「お前どうしたんだ、最近ボ〜ッとしちゃってるけど」
「え、そ、そう?」
「悩みがあるんだったら言えよ、仲間なんだから」
仲間・・・
サトシは私の事、ただの旅仲間として見てるのかな?
サトシは恋愛に凄く鈍いのは分かってても、なぜか私は、
サトシに、私の事を仲間以上の存在として見て欲しいと、ついつい期待しちゃうのよね〜。
「・・・サトシには、ちょっと言えないかも」
「だったらタケシにでも相談に乗ってもらえよ、アイツ、結構相談しやすいからさ」
「うん、そうする」
ちょっとだけ、試してみよう。
「ありがとねサトシ、心配してくれて」
そう言って、サトシに向かってニコッと笑った。
期待どうり、サトシが目をそらす。
「き、気にすんなって」
サトシの口から「仲間だろ」の一言が出てこない。ということは、仲間以上の存在として見てくれてはいるらしい。
その晩、野宿する事となり、タケシが夕食を作っている。
「ねえタケシ」
「ん、なんだハルカ?」
「ちょっと相談にのってほしいんだけど」
「ああ、別に構わないが・・・」
「あのね、タケシはもう気付いてると思うんだけど、私、サトシの事が好きなの」
「ああ、気付いてたよ。それに、無意識のうちにサトシに甘えてた事もな」
「やっぱりタケシね、そこまで分かってたんだ」
「・・・サトシも、ハルカに甘いのにも気付いてたか?」
「え?そうなの?」
「ああ、お前が甘えたらすぐ折れてるだろサトシ」
「そういえばそうねえ」
「サトシ本人は、気付いてないみたいだけどな。さ、それよりサトシ達呼んできてくれ」
「うん」
そう言ってハルカは、丘の上にある人影に向かって走っていった。
「本当に、お似合いだよな」
タケシは一言、そう呟いた。

「サトシ〜、マサト〜、ご飯よ〜」
「分かった、じゃあ行くか、マサト」
「うん」
「二人で何の話をしてたの?」
「ちょっと昔話をね」
「サトシの昔話?」
「ああ、まあな」
「いいなぁ〜、私も聞きたかったかも」
「後で聞かしてやるよ」
「本当?」
ハルカは目を輝かせた。
「あ、ああ」
「やった〜」
「それより早く飯にしようぜ、俺もう腹へって腹へって」
昔話は、夕食の時にも続いていた。
「でね〜、僕が風邪引いた時のお姉ちゃんったらね〜」
「ちょ、ちょっとマサト、その時の話はしないでって言ってるじゃない」
「それでさ〜、その時にヒトカゲが進化してさ〜」
ハルカは、サトシが笑顔で喋っているのを嬉しそうに眺めていた。
「ん?何だハルカ?俺の顔に何かついてるか?」
「え?ううん、何でもない」
「そうか、でさ〜マサト、その時にフシギダネがさ〜・・・」
(サトシって、本当にポケモンが好きなのね)
ハルカはそんな事を考えながらただじっと、優しい目でサトシを見ていた。
〜夜〜
ハルカは眠れなくて、一人寝袋を抜けた。
ハルカは、二人が座っていた丘に一人座った。
空いっぱいに星がある。ハルカは空を見上げてじっとしていた。
「ハルカ、何してんだ?」
突然声をかけられてびっくりした。後ろを見ると、そこにはサトシがいた。
「ちょっと、眠れなくて、サトシこそどうしたの?」
「いや、ハルカが抜け出したのが見えたから、なんか、悩みでもあるのか?」
「え?どうして?」
「いや、俺も悩みがあるときは眠れないから」
「悩みは無いけど、ちょっと覚悟が必要だったから」
「覚悟?何の?」
「真実を知る覚悟」
「何の真実?」
「サトシの、私に対する気持の真実・・・あ」
言ってしまった。本人がそこにいるのに、つい言ってしまった。
「・・・覚悟は、出来たのか?」
サトシは、静かに私に聞いてきた。
「・・・うん」
「そっか、じゃあ言うぞ、俺は・・・」

「俺は、ハルカの事が好きだ」
「え・・・」
ハルカは驚いた。あの鈍いサトシが、いや、そんな事は関係ない。
彼の口から聞きたいとは思っていたけど、実際に言われると、何故か変な感じがする。
「ハルカは、俺の事どう思ってるんだ?」
彼が私に聞いてくる。やっぱり、正直に言った方がいいよね。
でも、ちょっとだけからかってみよう。
「何よ、私、サトシをそんな風に見てないかも」
予想どうり、落ち込んだ。そんな彼の反応を見てクスッと笑う。
「何でそこで笑うんだよ」
「サトシっておもしろ〜い」
「からかってんのか?」
「ええ、からかってるわよ」
彼がまた沈んだ。
「・・・冗談よ」
彼の肩に頭を乗せて呟く。
「え?」
「冗談っていったのよ、本当は私も、サトシの事好きよ」
弄ばれたのが不服なのか、彼が膨れた。
そんな彼に、私が呟いた。
「ねえサトシ」
「何だ?」
声がまだ膨れている。
「これからもずっと、新しい地方を旅する時も、私、貴方の隣にいてもいい?」
「ああ、いいぜ」
ありがとうと言おうとしたが、眠たくなり、そのまま眠ってしまう。
「寝ちゃったか、俺もこのまま寝ちまうか」
そう言ってサトシは、ハルカを仰向けにさせて、自分も仰向けになり、目を閉じた。
〜翌朝〜
「二人とも、何でこんな所で寝てるんだろう」
「さあ」
サトシとハルカより先に起きたタケシとマサトは、サトシとハルカがいないことに気付き、見つけたと思ったら、二人とも向かい合ったまま眠っていた。
「何か二人とも、凄く幸せそうだね」
「ああ、このまま起きるまでそっとしといてやろう」
「そうだね」
そう言って二人は、朝食の準備をし始めた。
「ハルカ」
「サトシ」
寝言でそう呟いた二人は、眠ったまま、手を繋いだ。
二人は本当に幸せそうだった。起きてからもずっと、幸せそうにしていた。
あまりにも幸せそうにしてたので、タケシにはばれた。しかし、
そんな事もうどうでもよかった。だって、二人の絆は、もう
誰も入る隙が無いくらいにまで強くなっていたから。


 

本当に「お似合い」という言葉がピッタリの二人ですねw
お互いのことを気にしつつもなかなか言えなくて、でもやっとその気持ちが通じる時。
それからは強い愛で結ばれていって欲しいです。
Commentator by 冬草


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