君に会いたい

恋ってなんなんだろう。最近、その事しか頭に浮かばない。
正直、自分は今、恋をしているのだろうか?分からない。ただ、
今ここに彼女がいない。それだけで、俺は切なくなる。なぜだろうか、やっぱり分からない。
けど、一つだけ言える事がある。
あの娘に、ハルカに会いたい。
ホウエンリーグも終わり、ハルカとマサトと別れたサトシ。
タケシとも別れ、しばらく、マサラの家にいる事にしたのだが。
「はぁ〜あ」
「どうしたのサトシ、帰ってきてからずっとため息ばっかり
してるわよ」
「バリバーリ」
「分かんない、けど、今は何もする気になれないは確かだよ」
「またどこか、新しい地方を旅しないの?」
「今、旅に出たいとも思えないよ」
「だったらオーキド博士の所に行ってらっしゃい、あなたのポケモン達も、きっとサトシを待ってるわよ」
「そうだな、そうしよう」
立ち上がり、そして一言言い残した。
「俺に用がある電話があったら、オーキド博士の所に電話するように言っといてね」
そう言って、自分の家を出て、オーキド博士の研究所へと向かった。
それを見たハナコママは、
「重症ねえ」
と一言呟いた。
「こんにちわー、オーキド博士ー、いますかー?」
すると、すると変わりに、助手であるケンジが出てきた。
「久しぶり、ケンジ」
「サトシ、久しぶりだなぁ」
「俺のポケモンたちは元気か?」
「ああ、みんな元気、てうわあ!」
そこへ突然、ケンジが前に倒れて、ベイリーフが飛び出してきた。
「ベーイベーイ」
「ははは、久しぶりベイリーフ、くすぐったいって、やめろよ、
ははは」
先ほどの落ち込みはどこへ行ったのか、サトシはとても楽しそうだった。
すると、他のポケモン達も一斉に出てきて、サトシに飛びついた。
「おいおい、まずは中に入れてくれよ」
それを聞いたポケモン達は、とりあえず、じゃれるのをやめた。
「しかしどうしたんだ最近、ずっとため息ばっかりついてるそうじゃないか」
それを聞いたサトシは一気に沈んだ。
「お、おいサトシ」
「ケンジ」
「何?」
「自分でもよく分かってないから、あまりその事に触れないで
くれないか」
「わ、分かった、ゴメン」
「いいよ、分かってくれたら」
それを見たポケモン達は、とりあえずサトシを元気付けなければ、
と思ったらしく、またサトシにじゃれ始めた。
その時
「プルルル」
研究所に電話の音が響いた。
そして、しばしの沈黙の後、
「ケンジや、サトシは来ておるか〜?」
「はい、ここにいます」
「サトシ、電話じゃ」

「誰からですか」
「ハルカちゃんじゃ」
「ハルカ!?」
サトシはガバッと勢いよく起き上がった。そして、猛スピードで
オーキド博士のもとへと駆け出した。
「博士、ハルカからって本当ですか?」
「本当じゃよ、ほれ、君と話したがっとる」
サトシは、手渡された受話器を取った。オーキド博士は、仕事が
残ってるという事で、すぐにその場から去っていった。
「ハルカ?」
『サトシ、久しぶり』
「どうしたんだよいきなり」
『あのねサトシ、いきなりだけど、明日のお昼ごろ、マサラの
船着場に迎えに来てくれない』
「どういう事だ?」
『明日、マサトと二人でそっちに行く事になったの』
『本当はお姉ちゃん一人で行くはずだったんだけど、オーキド博士に会えるから僕も行く事にしたんだ。サトシのポケモンも見られるし』
『私のフシギダネも、なんだかサトシのフシギダネに会いたい
みたいだし』
「そっか、でもなんで突然来る事にしたんだ?」
『私、最近コンテストに出てもいい成績を残せてないの、そしたらパパがそれなら一回サトシ君の所に行ってきたらいいって』
「わかった、じゃあ明日の何時、うわあ!」
『どうしたの?サトシ』
「お前ら分かったから、後で遊んでやるから今はあっちいっててくれ」
どうやら、サトシのポケモン達が、じゃれてきたらしい。
後で遊んでくれると分かって、みんなは電話が終わるのを待つ事にした。
「じゃあ明日、何時ごろに待ってればいい?」
『1時くらいに待っててくれる?』
「ああ、いいぜ」
そして二人は、少しの間話をした。その間ポケモン達は、
サトシが元気になってよかったよかったと思っていたが、ベイリーフだけは、なぜか不機嫌そうな顔をしていた。
「じゃあな、また明日」
『うん、じゃあね』
電話が切れると、待ちかねた様にポケモン達が飛びついてきた。
「ははは、分かったからまず庭に行こうぜ」
オーキド博士の庭は、いつ見ても凄い。とにかく広い、その庭で、
ポケモン達がゆうゆうと暮らしている。
「ダネダーネ」
「お、フシギダネ、元気だったか」
「ダネダーネ」
「フシギダネ、明日、ハルカが来るんだってさ、またあのフシギダネに会えるぞ」
「ダネダ」
「ヘラクロッ」
「お、ヘラクロス、お前も元気そうだな」
「ヘラクロッ」
「カンビ」
「お〜カビゴン、相変わらず食ってばっかだなお前」
サトシの声が聞こえてないのか、すぐにカビゴンは寝てしまった。
「ありゃ」
そしてサトシは思う存分遊んで
「じゃあな、また明日も来るよ」
ポケモン達は、笑顔で返事を返してくれた。
家に帰ってから、サトシはずっとニコニコだった。
「サトシどうしたの、研究所で何かいいことでもあったの」
「まあね」
正式には研究所はあまり関係していない。明日、ハルカが来ることが嬉しいのだ。
「俺もうねるよ、お休み」
「はいお休み」
サトシは、ベットの中で、早く明日にならないかなぁと思っていて
なかなか眠れなかった。しかし、ポケモン達と遊んだせいか、
すぐに眠ることが出来た。

〜翌日〜
珍しくサトシは、一人で起きた。
「おはよう、ママ」
「あらサトシ、珍しいわね一人で起きるなんて、今日は雨でも
降るかしら」
「なんだよそれ、俺だって早起きするときはするさ」
「何か今日はいいことでもあるの?」
「へへ、まあね」
サトシはいつになく上機嫌だった。朝食を食べると
「オーキド博士の研究所に行って来る」
と言ってそそくさと家を出た。
この時ばかりは天然の母親も唖然とするばかりだった。
「ようケンジ、おはよう」
「サトシ、今日はやけに早くないか?」
「まあな、それよりフシギダネとベイリーフとケンタロス2匹、
連れてっていいか?」
「?別に構わないけど」
「悪いな、朝早くに」
「気にすんなよ」
そして午後1時
「あ〜、速くこねぇかなぁ」
サトシは待ちくたびれていた。
「お、あれかな?あ、ハルカにマサト」
向こうもこちらに気付いたのか、こちらに向かって手を振っている。
「お〜い」
こちらも手を振って向かえる。
「よ、久しぶり」
「久しぶりって言える歳月たってるかなぁ?」
「細かい事は気にしない気にしない」
「でもさすがに休みなく着てるから疲れたかも」
「へへ、そう言うと思ってたからな」
「誰か連れてきたの」
「まあな、出て来いケンタロス」
「モ〜」
「わ〜、ケンタロスだ」
「二人とも乗れよ」
「え、大丈夫なの?」
不安そうにハルカが聞く。
「大丈夫大丈夫、ケンタロス、お前達ハルカとマサトを乗せてゆっくり俺んちまで行ってくれないか?」
ケンタロスは「任せろ」と言わんばかりに鳴いた。
「ありがとな、二人とも、乗せてやるからこっちこい」
「わ〜い、ケンタロスに乗れるんだ〜」
マサトはおおはしゃぎなのに対してハルカはまだ不安だった。
「どうした?ハルカ」
「やっぱりちょっと不安かも」
「やっぱりそう言うと思ったよ、だからハルカにはこいつを連れてきたんだ、出て来い、ベイリーフ」
「ベーイ」
「うわあ、可愛いかも」
ベイリーフは出てくるなりすぐにサトシに飛びついた。
「あ〜もう分かったからどいてくれ〜」
ハルカはそれを複雑な気持で見ていた。
「ん?どうした、ハルカ」
「え、ううんなんでもない」
「そっか、ならいいけど、ベイリーフ、悪いんだけど、ハルカを
乗せて俺んちまで乗せてってくれないか?」
ベイリーフはハルカを見た。昨日の電話相手だ。ちょっと嫌そうな
顔をしたが、他でもないサトシの頼みだ。ベイリーフは元気に
頷いた。
「頼んだぜベイリーフ、ハルカ、乗れよ」
「う、うん」
こうして三人は、ポケモンに乗ってサトシの家へと向かった。
「タケシに聞いてはいたけど、本当に田舎ね」
「はは、まあな」
「うわ〜、ケンタロスの背中って気持い〜い」
マサトは本当に気持よさそうな顔をしたのを見たケンタロスは、
嬉しそうな顔をした。
「マサトって、ケンタロスとは相性がいいみたいね」
「ほんとだな、そうだ、マサト」
「何?サトシ」
「ケンタロスさえよければそいつ、10歳になったらプレゼントしてやろうか、ケンタロス次第だけど」
「本当、ケンタロス、僕が10歳になったら僕の所に来てくれる。」
ケンタロスは「もちろん」といわんばかりにないて、マサトの顔を舐めた。
「くすぐったいよ〜、あははは、僕、君の事、絶対大事にするからね」
「モ〜」
「よかったわねマサト」
「うん」
そんな事を話しているうちに、サトシの家に着いた。
「みんな、戻れ」
「ベーイ」
『モ〜』
「じゃあ、マサトへのプレゼントは、センリさんの所に転送しておくぞ」
「うん」
「さて、じゃあ家でお昼食ったらオーキド博士の所に行くか」
『賛成』
「ただいま」
『おじゃましま〜す』
「あらサトシ、お客さん」
「どうも始めまして、私ハルカです、こっちが弟のマサト」
「始めまして」
「二人とも、一緒にポウエン地方を旅した仲間だよママ」
「あらあら、サトシが朝から喜んでた理由はこれね」
そう言ってハナコはチラッとハルカを見た。
「喜んでたんですか?」
「ええ、朝からもう・・・」
「その話はいいから、ママ、俺腹減った」
「はいはい、ちゃんと準備出来てますよ」
そう言われてテーブルを見ると、ちゃんと全員分あった。
「何でもう出来てるの」
「あなたが出てった後、ケンジ君から聞いたのよ」
いろいろ考えたが、とりあえず飯を食おうと思った。
「じゃあ食うか」

「遠慮せずにどんどん食べてね、おかわりはまだあるから」
『は〜い』
「あ、サトシはちょっと手伝って欲しい事があるの」
「何を手伝えばいいの?」
「とりあえずこっちに来て」
そう言われて庭の水まきを任された。その水撒きの途中で、
「サトシ」
「何?」
「あなた、ハルカちゃんの事好きでしょ」
「い、いきなり何言い出すんだよ」
「あわててるって事は図星?」
「・・・分からない、分からないけど、ずっと一緒にいたいとは
思うよ」
「あなたって、自分の感情にすら鈍いのね」
「それって・・」
「さあ、もう水撒きはいいわよ、速くご飯食べてらっしゃい」
サトシは、母親の言った事の意味を考えながら家の中に入っていった。
「本当、鈍いわね」
そう言ってサトシが水をまいたところを見ていた。
そこには、分かりにくいがはっきりと「ハルカ」と言う文字を
かたどっていた。
「さ〜て、飯も食ったし、行くか」
『うん』
「ちょっと待って」
「どうしたの?ママ」
「ちょっと、ハルカちゃんと二人きりで話がしたいの、いいかしら」
「え、私ですか?」
「しょ〜がね〜な、ほれハルカ、フシギダネ預けとくから、
ママの話聞いたらフシギダネに道を聞けよ。」
「うん、ありがと」
「よし、じゃあ行くかマサト」
「うん」
そう言って二人は歩いていった。
「じゃあ、ハルカちゃんに質問するわ」
「はい、なんでしょう」
「サトシの事どう思ってる」

「どうって言われましても、私、あまり意識した事ありませんし」
「じゃあ聞くけど、どうしてハルカちゃんは、ここにこようって思ったの?」
「え、そ、それは、コンテストでいい成績がだせなくなったから
その事をパパに相談したら、そしたらじゃあサトシの所に行って来いって言われたから」
「本当にそれだけ?」
「え?」
「あなた、心のどこかでサトシに会いたかったんじゃないの」
「・・・凄いですね、これでも隠してるつもりだったのに」
「私も伊達に母親やってないわよ、さ、早くサトシの所に行ってあげて、あの子も心のどこかで、貴方の事を思ってるから」
「はい」
ハルカは元気に答えて、フシギダネに連れられて走っていった。
「元気で可愛い子ね、サトシが魅かれるのも無理ないわ」
「はぁ〜」
なぜかサトシは元気がなかった。外を眺めると、マサトがポケモン達と遊んでいる。ただしジュプトルは木の上でクールにしてるし、
オオスバメは、ヨルノズクと飛び回っている。今、自分の隣にいるのは、ベイリーフ一匹である。
「ベイベイ」
ベイリーフが、外へ行こうと自分の服を引っ張っている。
「悪いベイリーフ、後で行くから先に外に行っててくれないか」
「ベイベーイ、ベイ?」
それでも自分の服を引っ張るベイリーフが、不意に入り口の方を見た。サトシもつられて見る。
「よおハルカ、結構早かったな」
サトシの顔が明るくなる。ベイリーフは嫉妬してすねた。
「うん、あんまり大した事じゃなかったから」
「そっか」
ベイリーフの頭をなでながら答える。ベイリーフは嬉しそうな顔をした。
「ねえサトシ、ちょっと散歩しない?」
「ああ、そうだな」
この会話からベイリーフは、ハルカがサトシのことを思っている事に気付き、一人ライバル心を燃やしていた。
「オーキド研究所の庭って大きいわねー」
「ああ、俺も毎回見る度に思うなそれは」
そんな会話をして歩き出そうとしたら、2人の間にベイリーフが
割り込んできた。
「ベイリーフ、嫉妬してんのか?」
ベイリーフはまず、サトシのほうを向いてニッコリ笑い、そして、
ハルカのほうを向き「負けないわよ」とでもいいたげな顔をした。
(うわ〜、思わぬライバル出現カモ)
そんなこんなで散歩していると、と手も見晴らしのいい場所に出た。

「へぇ〜、こんな所があったなんて知らなかったな〜」
サトシが上を見上げている間、ハルカとベイリーフは、
火花を散らしていた。
「とりあえず少し休んでこうぜ」
「え、あ、そ、そうね」
サトシに話しかけられて、思わず視線をサトシに向けた。すぐにベイリーフを見ると、すごく勝ち誇った顔をされた。
「それにしても、最近平和だなぁ、ロケット団も出てこないし」
「そう、最近出てこないんだ」
「今頃どこで何やってんだか」
その頃のロケット団
「なんで私達が雑用みたいな事してんのよ」
「仕方ないだろ、借金返さないといけないんだから」
「早く終わらせニャイと次の仕事に間に合わないニャ」
借金返済のため、真面目に働いていた。
「何か・・眠い・・カモ」
そう言うとハルカは、サトシにもたれかかるようにして眠った。 「!?ベイベイ!」
「シ〜」
何か講義しようとしたベイリーフだが、サトシの一言で黙ってしまった。
「船旅の疲れがたまってたんだよ。それに、コンテストでいい成績を残せなかったって事は、もの凄く努力してたんだろうしな。
このままそっとしといてやろうぜ、それにベイリーフ、お前も
眠いんだろ、寝てもいいぜ」
ベイリーフは嬉しかった。自分の事も見てくれている。
サトシにとっては当たり前な事でも、ベイリーフは凄く嬉しかった。
飛びついたら迷惑がかかるので、優しく膝に頭を乗せて目を閉じた。
(たまにはこうゆうのも悪くないな)
可愛い女の子が1人と1匹、自分に寄り添って眠っている。
今の自分の状況を考えて、軽く笑みを浮かべると、自分も、
ハルカに寄り添って眠った。
だが、こんなサトシの幸せは起きるまでは続かなかった。
ヨルノズクとオオスバメが、この二人と一匹を見つけ悪戯な笑みを浮かべて、マサトの所にもどって行った。

サトシが目を覚ましたのは夕方頃だった。
だが、意識がハッキリしていないのか、目を開けることが出来ない。その時、誰かが大声で怒鳴っている声を聞いた。
「だから〜、そんなんじゃないんだってば〜」
(この声、ハルカ?)
意識が朦朧としていてもハッキリと分かった。
(あれ、そういや俺、ハルカとベイリーフが眠ったから俺も寝たんだっけ)
「でもこうやってケンジ君が写真の現像までして絵まで描いてるんだよ。どう言い逃れしようってゆうの」
(えっと、今の、マサト、だよな)
サトシは開かない目を無理やり少しだけ開けて辺りを見た。ただし、起きているのをさとられないようにして。
(ここは、研究所の中じゃないか、どうしてここにいるんだ?)
ベイリーフは、自分の腹の辺りでうずくまって眠っていた。
何故ここにいるのか、その疑問は、次のマサトの言葉でハッキリした。
「でも驚いたね〜、ケンジ君と一緒にオオスバメとヨルノズクに呼ばれて行ってみたら2人が寄り添いあって寝てるんだもん、やっぱりラブラブじゃん」 「だ〜か〜ら〜、私達はまだそんな関係じゃないんだから」
『まだ?』
マサトとケンジの二人でハルカをからかっていた。
「お姉ちゃん、まだってどうゆうこと?」
「そ、それは・・・」
この直後、ハルカは暴走した。
「あ〜もう、そうよ、私はサトシの事が好きよ!その写真のような関係になりたいなぁとか思ってるわよ!それが悪い事なの?ねえ、
どうなのよマサト」
「それは・・・」
(やばい、ハルカが暴走してる。止めなきゃ、よ〜し)
「ねえ、どうなのよマサトって・・・」
ハルカの声はそこで途絶えた。なぜなら、すぐ後ろで寝言が聞こえたから(本当は寝言ではないのだが)
「・・・う〜ん、ハルカ〜・・・好きだ〜・・・結婚してくれ〜、ムニャ・・」
「え、え、え、嘘、やだ、」
ハルカの顔がボッと赤くなった。予想外の展開にハルカはただ混乱するばかり、
「サトシ、どんな夢見てるんだろう」
「わかんないなぁ、サトシだけは」
落ち着いて話をする二人とは裏腹に、ただ混乱しまくるハルカ、
「え、私、そんな、え、な、まだ、え、そ、そんな、あれ、え、いや、まだ、嘘、そんな事言わないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ただそう叫びながら部屋を飛び出していくハルカ、
「お姉ちゃん!?」
「待てよ、マサト」
声がした方を振り向くと、サトシが起きていた。
「え、サトシ、起きてたの」
「ああ」
「じゃあさっきのは」
「本音だって言ったら」
「わあああああああ」
「ちょっちょっと待てマサト!おいマサト!?」
「ベイベーイ」
「!?」

 

ドゴッ

 
ドサッ

マサトが倒れた。サトシに捨て身タックルをかまそうとしたら、
突然ベイリーフが起き上がってマサトにツルのムチをお見舞いした。ベイリーフの攻撃が見事、みぞおちにヒットしたらしく、
マサトは床で痙攣していた。
「ベイリーフ、お前、どうして」
ベイリーフはこっちを向いた。その顔は「サトシが選んだのなら、私はそれを受け入れるよ」と言う顔だった。
「いいのか、お前」
「ベイベーイ」
「ありがとな、助けてくれて、俺、お前の「好きな人を一生懸命守る」とこ、好きだぜ」
「べ〜イ」
本当に嬉しそうに頬擦りをするベイリーフ、そんな彼女を見て一言
「でもなベイリーフ、これはちょっとやりすぎだと思うぞ」
床で痙攣しているマサトを見て言った。彼女は「失敗失敗」と言うような顔をして照れていた。ケンジはただ、呆然と見ている事しか
できなかった。

その頃サトシの家では
ガチャッ
「あらハルカちゃん、お帰りなさい」
(ウルウル)
「あら、サトシとマサトは?」
「ふえ〜ん」
ガバッ
「どうしたの?ハルカちゃん?」
「ママさん、あたしどうしよう、寝言だけど寝言だけど、ふえ〜ん」
「寝言がどうかしたの?」
ハルカは、ついさっき起こった出来事を偽り無くすべて話した。
「そう・・・」
「寝言だったからよかったけど」
「ハルカちゃん、落ち着いてよく聞いて」
「はい」
「多分サトシは起きてたわ」
「え???」
「多分サトシは、貴方が暴走したのを止める為に、寝言のふりをして貴方に自分の気持を伝えたんだと思うわ」
またハルカの顔がボッと赤くなる。その時
「ただいま〜」
ドキッ
「お帰りなさい、あらマサト君どうしたの?」
「後で話すからとりあえず俺の部屋に寝かしといてくれ」
「はいはい」
サトシが来る。
ドキドキドキドキ
「お、ハルカ、帰ってたのか?」
「う、うん」
どうしよう、聞こうかな、でも、
「サトシ、正直に答えなさいよ」
切り出したのはハナコだった。
「なんだよいきなり」
「夕方の時の出来事の時起きてたでしょ」
「・・・・・・」
ハルカはただ答えを待つ、ドキドキしながら、
「やっぱり、ママにはばれちゃうか」
「!?」
「じゃあ、本音なのね」
「そうだよ」
「え、あ、そ、それじゃあ」
「ハルカ、改めて?言うよ。俺と、結婚を前提に付き合って欲しい」

「うえええええええ、い、いきなり言われても困るかも」
「別にすぐ答えが欲しい訳じゃないさ、ただ、考えておいて欲しかったから」
「・・・」
「・・・」
しばしの沈黙、
「ここで黙ってても始まらないわよ〜、ご飯食べましょご飯」
『う、うん』
声が重なる。二人の顔が赤くなる。
とりあえず二人は夕食を食べる事にした。しかし、そこから
会話と言う会話は無く一日が終わろうとしていた。
ハルカは、一人眠れずに考えていた。しかし、答えは出ない。
とりあえずハルカは、バルコニーに出た。
星が綺麗だった。なんとなく人の気配がして下を見ると、そこにはサトシがいた。
「あっ」
思わず出てしまった。その言葉、急いで戻ろうとするが、その時にはもう遅かった。
「何やってんだハルカ?」
「サ、サトシこそ何やってんのよ」
「いや、眠れなかったから、ここ来るか?」
「う、うん」
「ベイリーフ、頼む」
「ベイベーイ」
す〜っとツルのむちが上って来る。ハルカはされるがままに、ツルのむちに巻きつかれて下ろされた。
「ねえサトシ」
「ん?何だ?」
「私の、どんな所が好き」
「そうだなぁ〜」

「やっぱり、全部かな」
「え?」
「ポケモン想いなとこ、ドジなとこ、優しいとこ、ワガママなとことか例を挙げたらきりが無いくらいいろんな面を見てきたけど、
そうゆうとこ全部ひっくるめてハルカの事が好きだ」
「・・・サトシ、今答えが出たよ」
「え?どんな?」
「ずっと一緒にいたい、これが私の答えだよ」
「え、それじゃあ」
「うん、結婚を前提に付き合おう。私達」
「ハルカ」
「サトシ」
そして二人はキスをした。ベイリーフが二人を気遣い。バルコニーへと移動させた。
「お休み、ハルカ」
「お休み、サトシ」
そう言うとベイリーフがサトシだけを降ろして自分の背中に乗せた。
ハルカは、キスした唇を撫でながら呟いた。
「何か私、今お姫様の気分かも」

〜翌日〜
「サトシ、あ〜ん」
「あ〜ん(パクッ)」
「あらあら、朝からお暑い事」
(何か、僕の知ってるお姉ちゃんじゃなくなっていく)
「じゃ今度は俺が、あ〜ん」
「あ〜ん(パクッ)」
「そうだ、今日から三人でカントー地方を旅しないか?」
「僕、家に帰る」
「なんで〜、一緒に行こうよ〜マサト〜」
「僕家でケンタロスと遊んどく」
「あ、そういえば」
「何?」
「センリさんから伝言」
「何て」
「お前はとっくに一人前だよマサト、ケンタロスはお前が持っていろ、まずはカントーでジムを回りポケモンリーグに挑戦しろ。だってさ」
「本当に?」
声は疑っていたが顔は輝いていた。
「ああ、嘘だと思うならセンリさんに電話するといい」
そしてマサトは電話をして、嘘でない事が分かって大はしゃぎ。
「よかったわねマサト」
「ああそれと、はい」
そう言ってサトシが手渡したもの、それは新品のハルカ達と同じ
ポケモン図鑑とモンスターボール。
「これは?」
「オダマキ博士に転送してもらっといたんだ。旅に必要なものとして」
「ありがとうサトシ」
「気にすんなって」
「マサト、たまには連絡しなさいよ。心配しちゃうから」
「分かったよ」
マサトの向かった方向を見つめながら、
「じゃあ俺達は、ジョウトから先に行くか」
「ええ」
「いってらっしゃい、貴方達もたまには連絡しなさいよ〜」
「分かってるよ、いってきま〜す」
そして、ホウエンを旅した3人は、それぞれ違う道を歩き始めた。
そして、マサトは5年後サトシと戦う事になる。
ポケモンマスターの座を懸けた戦いを、それはさておき、
二人は歩き始めた。誰の道でもない。二人だけの道を


 

穏やかに流れる日、突然再会したサトシとハルカ。
別れてから気づいていた気持ちに、ここで二人の想いが重なります。
この先ずっと一緒にいることを誓って。
ベイリーフとの三角関係ってのが面白いですね(笑)
Commentator by 冬草


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