ねがいごと

「わぁ、綺麗っ!」

満面の星空の下、夜道に少年と少女の影が揺れている。

「ねぇ見て、サトシ!天の川だよ!」

ハルカはまるで子どものようにはしゃいでいる。
それも、これほどまでに見事に美しい光景を見れば無理もないかもしれない。

今日は七夕。
立ち寄った街で行われていた七夕祭りは、大きな花火大会と、
大きな笹にみんなで一斉に願いをかけるという、この街での一大イベント。
サトシたちはそれに参加していた。その後の夜のこと。

タケシ、マサトは既にぐっすりと眠っている。
サトシ、ハルカはなかなか寝付けず、一緒に外を散歩しようということになった。

 
二人はポケモンセンターから少し離れた道を歩いていた。

「ねぇ、サトシは今日どんな願い事をしたの?」
星を見ながら、ハルカが訊ねる。

「俺?そうだな…世界一のポケモンマスターになることかな、やっぱり」

「へぇ、サトシらしいね」
ハルカはくすっと笑う。

「ハルカは?」

「トップコーディネーターになりたい、かな」

「なんだ、いつもと同じじゃないか」

「サトシこそっ」

二人は自然と笑顔になる。

「ちゃんと叶う日が来るのかな…」

「ハルカならできるさ」

「ありがと、サトシ」

いつからかサトシはハルカに優しい言葉をかけるようになっていた。

会話が途切れ、静かな時が流れる。

「ねぇ…手繋いでもいい?」

「えっ。べ、別にいいけど…」

そっとサトシの手をとるハルカ。

「サトシ、私ね…本当はもっと叶えたかったことがあるの」

「何?」

「こうして…サトシと一緒にいること」

ハルカはサトシに寄り添った。

「わ、ハルカっ…」

いつになく積極的なハルカ。

「サトシと二人っきりの時間が欲しかったの」

サトシの戸惑いもすぐに消えた。

「ハルカ…俺もだよ」

「えっ?」

「お前とこうしていると…幸せなんだ。ハルカと同じ願い事…」

サトシは立ち止まり、ハルカを強く抱きしめた。

「ずっと一緒にいれたらいいな…」

「サトシ…嬉しい…」

彼に身を委ねるハルカ。

「!」

ハルカがサトシの唇に自分の唇を重ね合わせる。
サトシも目を閉じ、それを受け入れる。

二人にはとても長い時間に感じられた。

眩い星の光が彼らを優しく包み込んでいる。
幸せな時を見守るように。
そして、二人の願いを叶えるように…


 

七夕の時に書いたもの。
二人の本当の願い事がこうだったらいいな。
なんて思ってたらものすごい甘々な小説になっちゃった…
書き始めた当初は色々キャラ出そうかと思ってたんですが結局纏まらなくてこんな感じに。
by 冬草


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